第54話

 集合場所は何の会話もなくシーンとして雰囲気は良くなかった。


「待たせたな、後は頼む」


 アーシェさんはそんな雰囲気など気にすることなく一番近くにいた男性に声をかけると早足で来た道を戻ってしまった。


「セイナさんですね。私は王国軍の軍師をしていますマレクと申します。作戦の指揮を取る事になっていますので少しの間ですが宜しくお願いします」


 様になった礼をする男性はスラッとした体型の優男って感じで、話し方などから親しみやすい感じがする人だった。


「宜しくお願いします」


 マレクさんと挨拶が終わり、他の3人とも挨拶をしようとしたが、それぞれが別の方向を向いているので躊躇ってしまった。


 ………仲悪そう。


 これは先が思いやられる。


 各派閥から選ばれた人達だから気持ちは分かる。でも、今はそれどころじゃないはずだ。彼らも頭では分かっているはずだけどそれでも今までいがみ合っていた相手といきなり仲良くしろと言ってもすぐには無理なんだろう。


「まあ見ての通りですが帰る頃には仲良くなっているでしょう。では……」


 マレクさんのセリフに2人が反応した。


「そんな訳あるか!」


「そんなのありえないわ!」


 一斉に反論が飛んでくるとマレクさんは構わず話を続けた。


「あの調子ですから彼らの自己紹介は私がしておきましょう。まず手前のお方は力の派閥から選ばれたホルトスさんです。まだ22歳という若い年齢にも関わらずその実力はトップクラスです」


 ホルトスさんは体こそそんなに大きくないが、体つきはかなり鍛えられていると分かるものだった。俺の視線に対して少し恥ずかしそうに手を上げて応えてくれた。


「次に隣にいる女性は魔力の派閥から選ばれたマリアンさんです。彼女は生まれつき魔力が高く、派閥の中では一番と言われています。将来はトップになるであろう有望株です」


 マリアンさんは魔女のような帽子と黒いワンピースを着ていた。見た目は若い女の子って感じがして可愛らしい。


「宜しく。まあ貴女には敵わないだろうけど援護くらいはできるわ」


「宜しくお願いします。期待してますね」


「最後に武装の派閥から来たウォードさんです。彼は数々の装備の発明をしているもはや派閥の頭脳です。今回は志願して来ていただいたそうで」


「宜しく頼む……今日は色々と装備を持って来たから試して欲しい」


 ウォードさんの後ろには大きな袋が置かれていた。


「宜しくお願いしますウォードさん」


 自己紹介が終わるとマレクさんは作戦の内容を告げた。


「さて、まず言っておきますがこの作戦が失敗すれば全てを失うと思ってください」


 マレクさんの言葉に誰かの息を呑む音が聞こえる。


「私達がする事は相手の大将を叩く事です。情報によると相手の国王自ら出向いているそうです。こんなチャンスはありません。本陣を叩けば前線は混乱し引き上げていくでしょう」


「この山を越えるって聞いたが本気なのか?」


「そんな事をしたら間に合わないわ」


 ホルトスさんとマリアンさんの言葉にマレクさんは胸を張って答えた。


「それなら問題ありません。このセイナさんが連れて行ってくれますから」


 視線が俺に集まると3人はどういうことか聞きたそうな顔をしていた。


「マレクさん。籠は用意できましたか?」


「ええ、あそこに」


 俺の質問にマレクさんは指でその場所を教えてくれるとそには大きな縄で出来た頑丈そうな籠が置かれていた。


「城の者に急いで作らせました。耐久性は保証しますよ」


「ではあの籠に入って下さい」


「これでどうやって……」


 訳がわからないといった表情をするホルトスさんとマリアンさんを含む4人は籠の中で窮屈そうにしていた。


「もっと離れてよ!」


「見りゃわかんだろ! っていうかそのバカでかい袋をどうにかできんのか!」


「無理だな……これが無いと作戦は成功できない」


 俺はそんな騒がしい中で力の魔法石を使うと空に飛ぶ。すると4人は目を丸くして驚いていた。


「す、凄い……空を飛ぶ魔法を初めて見たわ!」


 その中でもマリアンさんは一際目を輝かせていた。


 俺はそのまま籠を持ち上げると思ったより軽くて安心した。


 これなら行けそうだ!


「なんて力だ! やはり兄貴が歯が立たないって言ってた意味が分かったぜ」


 ホルトスさんは驚愕し、信じられないと言った顔で俺を見ている。


「じゃあ行きますね」


「ひぃー‼︎」


「きゃー‼︎」


 ホルトスさんとマリアンさんの悲鳴が重なる。


「セイナ殿! 山を越えたら海に出ます! 右の方に森が見えますのでそこへ降りて下さい!」


「分かりました!」


 山を越えるのは簡単だった。数十分程で海にでると漆黒の闇の中でも何とか森林を見つけてそこへ降りていった。


 籠を降ろすとひと息ついた。そこまで疲れは無かったけど何か飲みたい気分だ。


「話には聞いていましたが……私の想像を遥かに超えていました」


 マレクさんは先程までの爽やかな表情は崩れ、真顔になって驚いていた。


「あんたがいればこの作戦が成功する未来しか見えないぜ!」


 ホルトスさんは笑顔を見せて俺を見た。


「私もよ。あんな魔力を見せられたら悔しい感情も起きないわ」


 マリアンさんはお手上げの仕草をしながら言った。


「これは楽しみだ。俺の武具がどんな効果をもたらすのかが……」


 ウォードさんは何か分からないけど身震いして喜んでいるようだった。


「それでは少し休みながら作戦を共有しましょう」


 いつの間にか元の顔に戻ったマレクさんに促され、近くの場所で休憩にする事にしたのだった。



 


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