第52話
アークリーの話を聞いた後、急に自分の故郷が恋しくなった。お父さんお母さんにレン……それに村の皆んなの顔が浮かんでくると段々と胸が締め付けられていった。
「あの村が貧しかった理由が分かったよ……何にもない所から頑張ってきたんだね。故郷を追われて……辛かっただろうな……」
罪もないのに追いやられた俺の祖先の人達の為にも仇を打ってあげたい。そして、同じような事を起こさないようにベルセレ王国を倒すんだ。
「すまない……実は昔この国にひとりのアンデラ族の者が住んでいた。しかし、アンデラ狩りの際に当時の国王がその者を追い出してしまったのだ。当時わしは旅に出ていた時期でな。後から聞いた話だがこの国が犯した罪だと思っておる」
「ベルセレ王国に引き渡さなかっただけでもいいよ。きっと何処かに逃げてるって」
「さて、明日は重大な会議が始まる。もう休むといい」
「分かった。話てくれてありがとうアークリー」
そして次の日。美沙と朝ごはんを食べて休んでいた所、アーシェさんが迎えに来たのだった。
……………
「どうだった?」
会議が終わると美沙の元に向かった。すると何かウズウズした様子の美沙が俺に気付くと小走りに近寄って来てそう訊かれた。
「え……と話すと長くなるんだけど」
会議はアークリーの意向でなんと精神世界で行われたのだ。その為、それを知らされていなかった国王やその側近達はアークリーの姿を見てひっくり返っていた。
そんな騒がしく始まった会議でまずアーシェさんの作戦が伝えられた。
「相手は城を全戦力を用いて攻めてくるはず……ならばこちらはその隙を突いて手薄になるだろう相手の大将を取る」
そんなアーシェさんの作戦には反対が絶えなかった。その大半は地形的にベルセレ王国の目を掻い潜って攻めるのは不可能だと言う意見だ。実際この城は見通しのいい平原にたたずみ、裏は山でその先は広大な海原になっている。何か行動を起こせばすぐに察知されると誰もがその作戦に首をひねっていた。
しかし、そんな事は分かっているとアーシェさんは説明を始めた。
「裏の山から海に出て奴らの裏に周り込み本陣を叩く。奴らも山を越えて更に裏から攻めて来るなど思ってもいないだろう」
「バカな⁉︎ あの山を越えるのに何日かかると思っているのだ! その前に城は制圧されてしまうぞ!」
王様の隣にいた白髪に染まった目つきの鋭いお爺さんが反論する。
「私は本気だ。あの山をあっという間に越える事が出来る人物がいるのだ」
アーシェさんは俺を見た。
「セイナ殿、お父様から聞きました。あなたは空を飛ぶ事ができると」
俺がコクッと頷くと周りがざわついた。
「なるほど……それなら越えられるがひとりで行くわけではあるまい?」
知性が高そうな男性がアーシェさんにそんな質問を投げかけた。
「セイナ殿、何人までなら連れて行けますか?」
「そうですね……試した事はないので分かりませんが数人は大丈夫だと思います」
その根拠はアーシェさんから貰った魔法石だ。多分あれで力を増幅させればいけるだろう。
「セイナ殿に精鋭を集め今日の夜にも出発して貰います。セイナ殿、お願いします」
「分かりました。頑張ってみます」
「すまないな……君のような若い子にこの国の命運を託してしまって」
今までずっと黙っていた国王が初めて口を開いた。俺に申し訳なさそうな顔をして。
「大丈夫じゃアデルよ。こやつとワシがいれば無敵じゃ! 安心してこの国を守ってくれ」
アークリーの言葉に国王は頼むと頭を下げた。
「よし! これで会議は終わりじゃ! 皆は敵がいつ攻めて来てもいいように準備を始めよう!」
側近のひとりが会議を閉めると俺は魔法を解いたのだった。
会議が終わると誰かが近付いてくる気配がした。
「セイナ殿。少しいいかの」
声をかけてきたのは国王だった。
「はい」
「アンデラ族の事で謝らなければならない事がある。わしの父はアンデラ族狩りの際、この国に住んでいたアンデラ族を追い出してしまったのだ」
それはアークリーから聞いていた話だった。
「その者がどうなってしまったのかは分からぬがあまりに罪深い事じゃ。話によるとセイナ殿の故郷は辺境の地にあるそうだな。まさかあんな所まで逃げていたとは相当な苦労をしたと思う……本当にすまなかった」
「元はといえばベルセレ王国が悪いんです。国王様のお父様はきっと国の為にしたと思うんです。逃してくれただけでも良かったと思います」
………………………
「と、まあそんな感じだった」
「そっか……危険じゃない? 少し心配なんだけど……」
「大丈夫だよ。アークリーが付いてるし、精鋭部隊の人達もいるから」
「出発は夜なんでしょ?」
「うん」
「じゃあもう休むといいわ。夜になったら起こしてあげる」
「ありがとう美沙」
なんだか眠いのはあの人数を精神世界に連れていったからかもしれない。
俺は美沙と別れると自分の部屋に戻りベッドに倒れこんだ。
「……おやすみ」
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