第45話
俺は部屋に入ってきたリィーズさんに似た女性が俺や美沙にリィーズさんとアゼクさん、マーリラさんと、その場にいる人に視線を動かすとなんでここに呼んだのか不思議に思っているようだった。
「セイナさん、お願いします」
リィーズさんはその女性に何も説明しないまま俺に魔法をかけるよう促してきたので部屋にいる人全員を意識すると魔法を発動した。
「……これはまさかあの魔法か」
「アーシェお姉様……今日は来てくださいましたね」
あの女性はやっぱりリィーズさんのお姉さんだった。
「リィーズ……あれは……」
アーシェさんは何かばつが悪そうな顔をしていた。多分過去に何かあったんだろう。
「私はあの時の事をまだ許していませんがお父様が許してやってくれと仰ったのでお父様にちゃんと謝ったら許してあげます」
「リィーズ、一体何を……⁉︎ そんな……」
困惑するアーシェさんの視線が近付いてくる人物を捉えた瞬間目を見開き、信じられないような顔で固まっていた。
「アーシェよ。久しぶりだな」
「これは幻なのか……お父様は亡くなられたはずだ」
「ワシもそのはずじゃったが何故かこの世界に留まっておる。この者の中でな」
アーシェさんの視線が俺に向けられた。
「この者の……そうでしたか、申し訳ありませんお父様、私はお父様の最期に立ち会いませんでした。あろうことか仕事を優先したのです」
アーシェさんは頭を下げて謝るとアークリーは首を横に振った。
「よい、お前がワシの後を継いで国にいる種族をまとめる仕事をしていたのは聞いていた。それがどれだけ難しいことか分かっておる。別に謝る必要はない、見舞いに来てくれただけで十分じゃ」
「……」
アーシェさんは俯いていた。顔を見せたくないのか顔を上げずに肩を震わせていた。
「その苦労を話せる相手もいなかっただろう……その中でよく頑張ったな」
「しかし……私はお父様のようにはできませんでした……王の期待にも応えられず」
アーシェさんは涙ながらに話した。
「ワシでも何年もかかって信頼を築いて何とか表向きはまとめているようになったが裏では争いは相変わらず起こっていたようじゃ。だからお前に代わってそれが表に出てしまっただけの事。何も変わっておらんという事じゃ」
「お父様……」
「もうこれくらいにして戻りましょう。そろそろ夕食が準備できた頃ですから」
リィーズさんはふたりの会話が終わるなりそう提案してきた。それに賛同したアゼクさんとマーリラさんがしんみりした空気を明るくすると俺は魔法を解いたのだった。
それからはまるで俺と美沙の歓迎会のような豪華なパーティが始まった。屋敷で働く大勢の人の前で俺と美沙は紹介されるとその後は美味しい料理を食べながら親交を深めていく。特に同い年のマーリラさんは俺達によく話しかけてくれてすぐに仲良くなってしまった。
その夜は屋敷に泊まる事になり、俺達はマーリラさんの部屋で過ごした後自分達の部屋に帰って行った。
「じゃあまた明日ね」
「ふぁ〜 おやすみ」
俺と美沙はそれぞれの部屋に入っていった。
「アークリー、いい家族だね」
(そう言って貰えると嬉しいな。自慢の家族じゃ)
寝る前にアークリーと話をしているとドアの向こうで何やら物音が聞こえた。
「誰かいるのかな?」
気になってしまい俺はドアをゆっくりと半分くらい開けて外の様子を伺った。
「⁉︎」
「あれ? アーシェさんどうしたんですか?」
そこにはアーシェさんが気まずいような顔をして立っていたのだ。
「な、なんでもない。し、失礼する!」
顔を少し赤くしながらその場を離れようとした時だった。
(すまんがアーシェと話がしたい。呼び止めてくれないか)
「あ、すいません! アークリーがアーシェさんと話をしたいそうです」
「お父様が? ……では少し君の部屋で話を聞かせてもらってもいいか?」
「はい。どうぞ」
部屋に入るとアーシェさんが椅子に座ったのを確認して魔法をかけた。
「お父様……何か御用でしょうか?」
「ふふ、お前はワシに聞きたい事があってここへ来たのだろう?」
「そ、そんなことは……」
「何も言わんでもお前の顔を見ていればすぐに分かる。何年一緒に居たと思っておるのじゃ」
「ふ、お父様には勝てませんね。その通りです」
「城で何かあったな?」
「はい。ベレセレ王国が降伏勧告をしてきました」
まじかよ……
話を側で聞いていた俺はいきなりの大事に驚きを隠せなかった。まさかそんな事になっていたなんて少しも思っていなかったからだ。
「そうか……とうとう恐れた事が現実となったか」
「すでに国境で戦が起こり我が国は劣勢となっています。いつこの国へ来るかはもう時間の問題です」
「なるほどな。今の状況でこの国が攻められたら勝てないな」
「はい、城にはお父様のように戦略を考えられる者はおりません。それに種族間争いで国内はバラバラの状況……これで勝てるとは思えません」
「それを打開する策が欲しいということか……」
「情けない話ですが……」
「昔のワシなら綿密な作戦を考えるところだが今はそれよりもずっと簡単な方法がある」
「本当ですか⁉︎ それは一体……」
アークリーは俺を見ていた。
「え?」
まさかな……
「こやつがいればなんとでもなる!」
やっぱり!
「この者がですか? 私には普通の子にしか見えないですが……」
「お前は気づかなかったのか? あの部屋の人数をまとめてこの世界へ連れていくのがどういうことかを」
「そうだ……あれほどの事をするのは恐ろしいほどの魔力が必要だなはずだ……それをこの子が? しかし、それでどうしろと」
「話し合いではもはや時間が足りない。各種族を集めてそれぞれの一番強い者とこやつを戦わせて力を示すのだ」
「しかし……魔法特化の種族は納得するかもしれませんが、力を誇りにする種族からは魔法で勝っても認めてはもらえないでしょう」
「そこは心配ない。この街には身体能力を上げる魔法石があるだろう?」
「そうか! それを使えば魔力を力に変換して戦えます!」
「明日にでも準備をするのだ。時間は迫っておる」
「分かりました。ありがとうございますお父様」
話を聞いていると何やら俺が強い人と戦わないといけないのは分かった。話がどんどん進んでいくのを俺は見ているしかなかった。
(すまんの。ワシらの事情に巻き込んでしまって)
魔法を解きアーシェさんが慌てるように部屋を出ていくとアークリーが謝ってきた。
「いいよ、アークリーにはいっぱい恩返ししないといけないしさ」
もうこの手の事には慣れてるし。
(詳しいことは明日にでも話すから今日はもう休め)
「うん、おやすみアークリー」
今日は色々あって疲れた。柔らかいベッドに入った瞬間意識がなくなったように眠りについていた。
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