第6話 お茶会
「リーズ嬢、パール嬢、ご機嫌いかがですか?」
クライブはすました調子で私達に話しかけた。
「今日は気候も良く、楽しい勉強会でしたわ」
私が答えると、パールたんもうんうん、と頷いた。
クライブは私の椅子のそばに近づき、私を見つめて言った。
「お会いできてうれしいです。リーズ嬢」
パールたんの表情が切なげに歪んだ。私は椅子の背に乗せられたクライブの手を払い、クライブをかるく睨みつける。
「私は勉強をしに来ただけですから。ね、パール様」
「えっと、あの……」
パールたんはクライブに何か言おうとして口を動かしたが、言葉にはならなかった。
「私もお茶会に参加してもいいかな? レミ?」
「珍しいわね、お兄様。いつもは私から逃げるのに」
レミ様はクライブに少し批判的な笑みを向けて、小さく頷いた。
「ありがとう。では、失礼」
クライブは私の隣に座った。こいつ、なんかうっとおしいのよね。でも、パールたんはこいつのこと好きみたいだし……。私のそばに来ないで欲しい、と思いながらクライブを見ていると、クライブが微笑みながら言った。
「リーズ嬢は私に見とれているのかな? 熱い視線を感じるんだが」
「気のせいです」
私がきっぱり言うと、レミ様がふきだした。
「お兄様、相手にされていませんね」
レミ様は楽しそうだ。パールたんは複雑そうな笑みを浮かべて紅茶を飲んでいる。
「クライブ様には私よりお似合いの人がいると思いますわ」
私はそう言ってパールたんを見た。パールたんは目を丸くしている。
「リーズ嬢、私はパール嬢には友情しか感じていない」
パールたんの顔がこわばった。紅茶を持つ手が震えている。
「リーズ様、あまり意地悪をおっしゃらないで」
パールたんが泣きそうな声でささやくように言った。
え? 私、パールたんに嫌われた!?
「あ、あの、友情から恋が始まることもあるでしょう?」
私は焦ってなんとか取り繕うとしたけれど、パールたんはうつむいている。
「まあ、確率は低いだろうな」
クライブの奴、偉そうに……! 私は奥歯をぎりりと嚙みしめた。
クライブは紅茶を飲み終えると立ち上がって言った。
「そろそろお暇しよう。またお会いしよう、リーズ嬢、パール嬢」
クライブが部屋から出て行くと、パールたんが小さな声でつぶやいた。
「リーズ様……私のことをからかっていらっしゃるの?」
そんなわけないじゃない! と叫びそうになった私が言葉を発する前にレミ様が言った。
「いつものことじゃない。リーズ様は」
いつものこと?
え?
私、パールたんと仲良くなりたいだけなのに……!?
「申し訳ありません。パール様」
私があやまると、パールたんとレミ様が目を見開いて私を見た。
「リーズ様が反省するなんて……やっぱりお加減がよくないのね」
レミ様はそう言うと私を見つめて優しく微笑んだ。
「早くお帰りになって、ゆっくり休まれてください」
パールたんも頷いている。
「……ごきげんよう」
私はとぼとぼと部屋を出て、馬車に乗り家路についた。
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