心中はセーラー服で。

一 杞憂

プロローグ

 冬。

 降りしきる雨に濡れ、わたしたちは水溜まりに身体を映した。

 体温は雨に奪われていく。だけども、わたしたちの間には温かい熱があった。

 その日、髪もセーラー服もびしょ濡れになったまま、秘密の約束をしたんだ。


「わたしたち、一緒に死のうよ」


 雨の音と混ざりながら、渡瀬彼方わたせ かなたにそう言った。

 手を取って、身体を密着させ、体温を分け合った。

 わたしの息が彼方の額にかかるように、彼方の息は、わたしの鎖骨を撫でた。


「うん、いいよ。一緒なら怖くないね」


 いつものように、かき消えてしまいそうなほどの小さな声で、彼方は返事をした。


「あと一週間。一週間だけこの世界を生きよう。一週間後にはこの世界とおさらば!」


 わたしがそう言って両腕を広げると、彼方は優しく微笑んだ。

 その微笑みは、わたしにとっての救いだった。

 この世界を、最後まで生きられた微笑みだった。

 わたしは広げた腕で、優しく彼方を抱きしめた。

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