第118話

私は、とんでもないことを、してしまったかもしれない。


ユキの通う大学の教授に、下心満載の奴がいるという。

あれほどの美女であるユキに、そいつが目をつけないはずもない。

実に嫌らしいタイミングで、ユキに肉体的接触を試みると言う。


しかも、ギリギリ偶然を装ってだ!



私は腹が立った。

そいつをぶん殴りたいという怒りを抑えて、冷静になって考えてみる。


・・・そういえば、ユキはいつもネックレスを着けていた。

美しい首元に、きれいなネックレスがあったのを思い出した。


よし!


私には、僅かだが「怪しげな力」がある。

それを込めたネックレスを身に着けたら、ユキにとって嫌な奴は、途端に眠くなりグッタリするだろう!


私の怪しげな呪いの力をネックレスに込めて、そのバカ教授と接する時は、それを身に着けて、接してもらおう!


そして、何故か私もグッタリ眠くなるんだよ!




真夜中にもかかわらず、私はユキにそんな内容のメールを送った。




冷静に考えれば、私はただのバカだ。

だが、残念ながら、酔っていた私はその自覚がない。




「え?いいの??」


ユキからすぐにメールが来る。




「まかせなさい!」


酔って気の大きくなっている私は、即答する。




・・・ただ、それを送るには、ユキの住所が必要だ。

とびきりの美女であるユキの住まいを知ったら、正直悩ましい。

だから、敢えてきかなかった。


それを素直に伝える。


「スズキさんなら、べつにいいですよ!」

「あのスケベ教授なんて、しつこくて!」

「・・・嫌な思いばっかり!!」

「住所はね!」



そう言って、拍子抜けするほどあっさりと

私に一人住まいの自宅の住所を送り、欲しいネックレスを指定してきた。

ユキが欲しいというネックレスは、上品で私も気に入った。


・・・ただ、

ほぼ見ず知らずの私たちの間柄では、

ユキが少しだけ重く感じるかもしれない程度の価格だった。


だが、


「おう!明日にでも注文して、ユキのところへ送るぜ!」


酔うと、いいかっこしいになる私は、即答した。




言ったからには、行動する。

それが私の信条だ。


翌日、さっそく購入手続きを済ませ、たっぷり私の怪しい呪いを込め、

ユキに送る。



「ありがと~(涙)」


と返事が来た。





喜んでもらえて良かった!

素直に私は嬉しかった。






・・・だが、待て?


常に身に着けるものというのは、少し重くないか?


ネックレスを贈る心理を調べてみた。




あちゃ~ 滅茶苦茶、重いじゃねぇか!


そんなものを、私は送っちまったのか・・・


ユキもユキだ・・・なんで、そんなに明るく喜ぶ??




当然、ユキは私が単純な男であることを知っている。

だから、そんな重い意図などないと分かってくれているはずだ。



とはいえなぁ、ユキ、君は無防備すぎるのだよ!

そんなに美しくて可愛い女性なんだから、もっと警戒しなさい!





       でも、正直私は嬉しかった。

       ありがとう

       君は、最高の女性だよ!









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