また会えたね…… ともみちゃん……

数金都夢(Hugo)Kirara3500

ともみ・裕加編

教会の地下にいると聞いて行った

 高校時代に交通事故に遭った幼馴染のともみちゃんが聖マリア教会の地下にいると先日行った同窓会で伝え聞いて居ても立っても居られない気持ちになった。聖マリア教会ってどこかで聞いたことがあるよね?と思ったら通勤ルート上にそびえ立つあの教会のことだった。


 そして私はそこに行ってきた。教会の地下にあるというそれの正式名称はクリプトで通称はカタコンベ。中に入ってホール横にあるそれの入口で拝観料を払って階段を降りて中に入る。入口付近の礼拝室を過ぎ、その先へと急いだ。そして話に聞いた八五四番の棚を探した。そこの前に着くと強化ガラスで閉ざされた棚の奥に置かれたアクリルケースの中で彼女は当時通っていた高校のブレザーを着て眠っていた。


 私は彼女の寝顔を見て即その場で泣き崩れて床にへたりこんだまましばらく立ち上がれなかった。

「お久しぶりだね、ともみちゃん……」

私はしばらくたってから立ち上がって声をかけた。目の前の彼女はなんの憂いもなく気持ちよく夢の中にいるように見えた。これがおくりびとというかエンバーマーさんの職人技なのだろうと思う。そして私は大学でのこと、そして卒業してから現在の会社に勤め始めてからあったいろいろなことを彼女に話しかけた。


 彼女は今日までここでどんな声を聞き続けてきたのだろう。定期的に来る家族から語りかけられたり、あるいは縁もゆかりも無いインバウンド観光客が通りかかった時の話し声まで。


 帰り際、横を向いた時、周りで静かに眠っている子たちにも一人ひとり全員それぞれ私が想像できないようなドラマがあるのだろう、と思うと重苦しい気持ちになった。そして最近会社でいろいろとメンタルに来る状況が続いていた私にとって、彼女と対面して落ち着いた後は、もっと長く生きていろいろなことをしたかっただろう彼たち彼女たちに見守られながら、ずっと人生に付いて考えを巡らせていた濃密な時間でもあった。私は、「軽率な行動」を絶対にしないし二度と考えたりもしないで与えられた人生を頑張って歩もうと神様と彼女とここで眠っている子たちに誓った。


 私はそれ以来、時間に余裕があるときはここに来て足元の花立てに近所の花屋で買った百合の花を立ててから、ともみちゃんに近況を二言三言話しかけて帰るようになった。拝観料は彼女を預かって、そしてお守りをしてくれていつもありがとう、の気持ちで払ってる。

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