第23話 復讐の決意、天秤にかけられる運命
神殿の中でリューナの体が冷たくなっていくのを感じながら、アルノは怒りと悲しみで心が満たされていた。彼の胸の中で、かつて一緒に笑い合ったリューナの姿が鮮やかに蘇ってくる。しかし、彼女はもう戻らない――その現実がアルノをさらに深い絶望へと突き落とした。
シルヴィアが魔法を放ち、周囲の敵を一瞬で焼き尽くしたが、その顔には冷たい怒りが浮かんでいた。彼女はリューナの死に対して、何か自分にできることがあったのではないかと、内心で激しく自分を責めていた。
「アルノ…」
シルヴィアが静かに声をかける。彼女の目には、感情が押し寄せる中での葛藤が表れていた。
アルノは立ち上がり、剣を握りしめた。これ以上、誰も失いたくない。リューナの死を無駄にしないためにも、彼は自らの全てをかけて戦う覚悟を決めた。彼の瞳には決意の炎が燃え、冷静に敵の存在を見据えていた。
「行こう、シルヴィア。まだ終わっていない。」
アルノの言葉に、シルヴィアは静かに頷き、二人は再び戦いへと足を踏み入れた。
新たなる敵との遭遇
神殿の最奥に向かって進んでいく中で、彼らはさらなる敵に遭遇した。それは、これまでの魔物とは違い、異質な存在だった。巨大な鎧をまとった黒い影が、彼らの前に立ちはだかった。その目は赤く光り、まるで彼らを嘲笑うかのように不気味に動き出した。
「これは…神殿の守護者か…」
シルヴィアが鋭くその敵を睨む。
「関係ない。倒すしかない。」
アルノは強く剣を握りしめ、攻撃の構えを取った。
しかし、この敵は今までのような単純な魔物ではなかった。圧倒的な力でアルノたちを圧倒し、次々と強力な攻撃を繰り出してきた。シルヴィアが魔法で反撃を試みるも、その魔法は防がれ、攻撃は跳ね返されてしまった。
「ダメだ…このままでは…」
シルヴィアが口を噤み、動きを見極めるが、敵の動きは予想以上に速く、彼女は一瞬の隙を突かれ、重い攻撃を受けて地面に倒れた。
「シルヴィア!」
アルノが叫び、すぐに彼女の元に駆け寄るが、敵は彼らを休ませることなく次の攻撃を仕掛けてきた。アルノは剣でその攻撃を受け止め、何とか持ちこたえたものの、体は限界に近づいていた。
「リューナ、俺はお前の死を無駄にはしない…」
アルノは再び立ち上がり、剣を高く構えた。
シルヴィアの覚醒
倒れたシルヴィアがゆっくりと目を開けた。その瞳は以前よりも強く輝き、彼女の体からは新たな力が溢れ出していた。リューナの死を無駄にしないという強い決意と、アルノを守るという想いが、彼女に新たな力を与えたのだ。
「アルノ、下がって。私がやる。」
彼女は静かに立ち上がり、その手に宿る強力な魔法の力を解放した。
「シルヴィア…」
アルノは彼女の力強い姿に目を奪われながらも、その力が暴走しないか心配していた。
「この力で…全てを終わらせる!」
シルヴィアは再び敵に向かって立ち向かい、強大な魔法を放った。光と闇が交差し、敵の防御を突破する一撃が放たれた。その一瞬、敵の体が大きく揺らぎ、崩れ落ちた。
「やったか…?」
アルノが息を呑んで様子を見守る。
しかし、敵は完全に倒れたわけではなかった。その体は徐々に再生し、再び立ち上がろうとしていた。
「まだ終わらない…!」
アルノは剣を構え直し、再び戦いに挑もうとしたが、シルヴィアが彼を制止した。
「アルノ、この力を使うのは一度きり。だからこそ、ここで決着をつけるしかないのよ。」
彼女の声には、覚悟が感じられた。アルノはその覚悟を理解し、彼女に全てを託すことを決意した。
「わかった。お前を信じる。」
アルノは静かに頷き、シルヴィアに背を預けた。
シルヴィアは再び強力な魔法を準備し、そのすべての力を込めた一撃を放った。その光は神殿全体を包み込み、敵を完全に焼き尽くした。
フック
敵を倒した後、シルヴィアの力は消耗し、彼女はその場に崩れ落ちた。アルノは彼女の元に駆け寄り、倒れた彼女を抱きしめた。
「シルヴィア、無理をするな…」
アルノの声には心配と感謝が込められていた。
「大丈夫よ、アルノ。私は…これからもあなたのそばにいるわ。」
シルヴィアは微笑みながら、彼の手を握り返した。
しかし、その瞬間、神殿の奥からさらなる不気味な気配が漂い始めた。それは、これまでとは異なる、未知の存在の予兆であった。
「次は何だ…?」
アルノがその気配を感じ取ると、神殿の壁に巨大な扉が現れ、その扉がゆっくりと開かれた。
「まだ試練は続くのね…」
シルヴィアは疲れた表情を見せながらも、決意を新たにした。
「この先に何が待っているのかはわからないが、もう後戻りはできない。行こう、アルノ。」
彼女の言葉に、アルノは静かに頷き、二人は扉の向こうへと歩みを進めた。
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次回は、2024年10月8日(火)17時投稿です!
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