第38話 システムエラー?①
「ギャレット、あなたどこか具合が悪いの?」
「え?」
朝食を取りながらボーっとしていたのを、母に声をかけられた。
その瞬間、ボトリとスプーンの上に乗っていたスクラブルエッグがテーブルに落ちた。
「あ、ご、ごめんなさい」
「心ここに非ずね。お腹が空いていないの?」
「そ、そんなことは…」
「顔色もなんだか冴えないし」
実は剣術大会の後から毎晩同じような悪夢を見て、夜中に目が覚めるを繰り返していた。
一度目が覚めるとなかなか寝付けずそのせいで寝不足になっていた。
「悪魔の瞳」という言葉がギャレットの耳に木霊し、起こるはずのない未来。小説のストーリーの展開が夢に出て、ギャレットを苦しめていた。
違う。こんな未来は起こらない。そう言い聞かせるのだが、なぜかうまく行かない。
しかも、そんな悩みを誰にも相談出来ない。
昨日、ジュストから手紙が届いた。
ギャレットがベルンに食って掛かったせいで、ジュストが学園の教師たちから怒られたり、他の人たちから心無い言葉を言われたりしなかっただろうか。
そんなことは微塵も書かれてはいなかったが、本当のところはわからない。
ジュストがあえて書かなかっただけかも知れないからだ。
夢見が悪かったせいなのか、ジュストの手紙も、そんな風にネガティブに受け取ってしまう。
「ギャレット?」
「ごめんなさい、母上…ちょっと頭が…」
目の前の母親の姿が何だかぼやけて、グラグラと揺れた。
「ギャレット!」
「ギャレット様!」
バタンと、その場にギャレットは倒れた。
それはギャレットとして覚醒した時の状況に似ていた。
もしかして、これってバグ?
ストーリーの展開が変わってきたから、システムが修正をしようと告げているのか、ギャレットは熱を出して寝込んでしまった。
熱の影響か、ギャレットは業火に焼かれて最期を迎える夢も見た。
ステファンとレーヌが共に手を取り幸せそうに微笑む傍らで、血の涙を流して横たわるジュストの姿も見た。
義弟を殺してまで守ろうとした愛しい女性。
人生良いことなしの中、唯一彼の人生に灯火を点けてくれた人。
小説で一度はジュストに傾きかけた彼女の心は、眩しいくらいに輝くステファンに奪われる。
僕なら裏切らない。
僕ならずっとジュストのことを大事にするのに。
僕なら…
「ギャレット?」
額にヒヤリとしたものを感じ、目をうっすらと開けると、目の前に心配そうに此方を見つめるジュストの顔があった。
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