雨降りの滝

雨降りの朝、なぜだか滝が見たいと思った。

雨降りの滝なんて誰も賛成してくれないだろうと口に出さずにいたら、


『今日滝見に行かない?』


突然、元夫からLINEでそんな誘いがあって、速攻『行く!』と返信をした。なんなんだろう、私のテレパシーが奴に届いたのだろうか……。そう思わずにはいられないグッドタイミングだった。


子供たちに、

「お父さんが滝見に行く? だって。どうする?」 

と聞けば、二人とも「行く!」と乗り気だった。


私たち家族は、久々に4人揃って雨降りの滝を見に出かけた。


雨降りの中の滝は、晴れの日の滝とはまた雰囲気が違って、さらに幻想的で迫力があった。

程良く霧がかった緑の景色、水の音が心地よく鼓膜を震わせてくる。マイナスイオンがS級クラスの空間だった。


滝をバックに息子と娘とで写真を撮ってもらう。

私の右側と左側にいる子供達は私を見下ろすほどに大きくなっている。

5年前に那智の滝を見に行った時には、私が娘を見下ろしていたのにと、時の流れにしみじみとさせられた。


向かえ側でスマホを構える連れの姿はおじさんに磨きがかかり、それにも時の流れを感じさせられた。

多分撮られる側の私もそれに比例しているはずだ。

だけど、ただ何となく生きてきただけの変化じゃないはずだ。じゃあ何を? と聞かれたとして、コレだ! とドヤ顔で言えるものもないけれど。


時は大分流れた。

そしてこれからも流れて行く。


私は、今の家族の形とここにある風景を、大切な思い出として残しておきたくなった。


写真や動画をいくつも撮っておく。


多分、未来の私がそれを振り返ったとき、懐かしい…と喜ぶだろうから。


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