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 鳥の巣の小屋全体が上質な桐で作られているお風呂場はとてもいい匂いがした。思わずくんくんと若竹姫はそんな木の匂いを嗅いでしまう。(とても腕の良い都の宮大工さんが作ってくれたらしい。とても素晴らしい造りをしている)

 新鮮な木の匂い。

 それから、贅沢なお湯の匂い。(湯船の中に手をつけてみる。あったかくて気持ちいい)

 白い湯気の中で、自分の長い黒髪や白い体を丁寧に手ぬぐいで洗いながら、すごく気持ちいい、と若竹姫は本当に心の底からそう思った。(生き返ると思った)

 四角い桐のお風呂の中にあるお湯はとてもちょうどいい湯加減だった。白藤の宮が若竹姫が今日、鳥の巣を訪れると知っていたから、きっと朝早くからいろいろと若竹姫をもてなすための用意をしてくれていたのだろう。(鯛や桃もそうだし)この贅沢なお風呂もそのうちの一つだった。(白藤の宮は本当に若竹姫のことを愛してくれていた。ちょっとだけいじわるなところもあるけど……)

 髪と体を洗い終えた若竹姫は、白藤の宮に感謝をしながら、湯船の中にその白い体をゆっくりとその足先から浸かっていった。

 肩まで湯船に浸かって、若竹姫はにっこりと笑顔になる。緊張が解けていくのがわかった。若竹姫の雪のように白い肌がだんだんとほんのり赤い色に染まっていく。

 若竹姫がお風呂場まで移動するとき、雨は止んだままだった。

 ……、でも、また雨は降り出すかもしれない。雨は降ったり止んだりを繰り返しているようだった。(若竹姫が森にくる前にも雨は降っていたようだったし)

 白藤の宮がお風呂場に移動するときには、まだ雨が止んでいるといいな、とそんなことを肩まで湯船に浸かりながら、(頬を赤く染めて)若竹姫は思った。

 それから若竹姫はお風呂場の格子状の窓から、夏の夜の森の風景に目を向ける。

 雨は止んでいるけど、空は曇ったままのようだった。

 ……だから森の夜の空には若竹姫の大好きな月も、星の光も、暗く分厚い雲に隠れてしまっていて、今はまだみることができなかった。

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