第34話
パーティーが無事に終わり、蔵之介はほっと胸を撫で下ろしていた。
偽彼氏としての役目を果たしたことに安堵しつつも、あの場で美咲と舞に会ってしまったことで心中は複雑だった。だが、今はそれを考える余裕はない。
やるべきことを終えたのだから、とりあえずは役目を果たした自分を褒めるべきだ。
麗華に連れられ、二人はスイートルームへ戻ってきた。
豪華な家具や高級感溢れる内装が、二人を静かに迎え入れる。パーティーの喧騒から解放され、部屋には落ち着いた静けさが漂っていた。
「蔵之介君、本当に今日はありがとう。あなたのおかげで大成功だったわ」
麗華はソファに腰を下ろし、安堵の笑みを浮かべていた。彼女の言葉には満足感が溢れており、蔵之介もそれを感じ取ることができた。
「いえ、僕はただ言われた通りに動いただけですから。でも、ご両親も喜んでくれたみたいで良かったです」
蔵之介は、まだ緊張が少し残ったまま、ソファに腰を下ろした。
偽彼氏としての演技が成功したことは、彼にとっても安心材料だった。しかし、その瞬間、麗華がテーブルの上に何かを差し出した。
「これは、今日の報酬よ。約束していた額よりも多いけれど、両親もとても満足していたから、それに対する感謝も含めているわ」
蔵之介は目を疑った。テーブルの上に置かれた封筒。中を見ると、100万円が詰め込まれている。
「…100万円? でも、最初は30万って話だったんじゃ…」
驚きで声が詰まる蔵之介に、麗華は微笑んで頷いた。
「そう。でもね、あなたの演技が想像以上に良かったの。両親はあなたをすごく気に入ってくれた。だから、もっと続けてほしいの。ダメかしら?」
その言葉に、蔵之介は困惑した。偽彼氏としての役割は、今日限りのはずだったはずだ。
だが、麗華の言葉から察するに、両親はそれ以上のものを期待しているらしい。
「続けてって…つまり、これからも僕が麗華さんの彼氏として?」
麗華は静かに頷く。
「そうよ。あなたなら両親も安心してくれると思うの。だから、今後もこのまま偽彼氏を続けてくれないかしら?」
蔵之介は封筒を握りしめたまま、頭の中が混乱していた。
追加の報酬は魅力的だ。正直、今の彼には金銭的な余裕などなかった。これほどの金額を手にできるならば、他に何も文句はないはずだ。
これは彼氏として横にいるだけで、お金がもらえる。
それは僕が望んだ永久就職という形に一番近いんじゃないだろうか?
だが、同時に不安もあった。
今回のように一度だけなら、まだどうにかできた。だが、これを続けるとなると、どれほどの負担がかかるのか想像もつかない。
(この先もずっと、偽の彼氏として振る舞うなんて…そんなことできるのか?)
蔵之介は心の中で葛藤していた。
金額的には非常に魅力的なオファーだ。
100万円を受け取り、さらなる報酬が約束されるのなら、彼の生活は一変するだろう。だが、その代償として彼は自分を偽り続けなければならない。
(でも、美咲さんや舞さんにまた会ったら…どうするんだ? 今日のことだって、まだ消化できてないのに)
美咲や舞の顔が脳裏をよぎる。偽彼氏の演技を続けることで、これからも彼女たちと顔を合わせる可能性がある。
蔵之介は二人に対して何も説明できていない。今日の出来事が、彼女たちにどう映ったのかもわからないままだ。
蔵之介は、一瞬麗華の顔を見た。彼女は冷静で、どこか優雅な笑みを浮かべている。その姿は、まるでこの状況を全て掌握しているかのようだ。
(このまま続けるべきなのか…それともここで断るべきなのか?)
心の中で渦巻く感情は、蔵之介を揺さぶり続けていた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
さて、話は佳境です。
現在
立花麗華
月島舞
橘美咲
三人の女性との関係が書かれております。
三人のうち誰を選ぶのか? それともハーレムか? それとも…誰も選ばないのか?
少しお休みして、コメントを待ってみようと思います。
遊びの一つとしてコメントいただれば幸いです。
どうぞよろしくお願いします(๑>◡<๑)
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