初登校Ⅰ
翌日、僕は起き上がる。
起き上がってから、ふと手をぐーぱーさせる。
うん、間違いなく僕の手。
一日経ってようやく自分が幼女に近い体になった感じが実感に変わった。
昨日は、感覚とか周りの環境は僕だとわかるのに、映像とかで誰かの人生を見ているような感じがあった。
体が受け入れても脳が受け入れなかったとでも言うのだろうか?
…..あり得るだろうか?僕に限ってそんなこと。
自慢じゃないが、僕は脳内の情報処理が早い自信があるし、かなりの情報量を一気に受け取っても処理落ちしない自信もある。
だとすれば、僕さえも知りえない人体の機能なのか....
いや、今はそんなことを考えている場合じゃないね。
なんてったって今日は平日。学校に登校するべき日。
今するべきは、考察ではなく、準備だ。
え?制服とかサイズ大丈夫なのかって?
ご心配なく。この国はTS病の人へのサポートが手厚いからね。
診察の際に計測した身長等のデータがすぐに送られて、それをもとに制服を仕上げてもらったから。
今日は体育もあるけど、ジャージに関しても同じ理由で問題なし。
さて、さっさと着替えてしまおうか。
僕は着替えが早い方なので一分かかるかかからないかで着替え終わる。
制服は男の人には縁があまりないスカートだから時間かかると思ったら大間違い。
僕は昔に叔母さんにスカートを履かせられたことが何回もあるからね。構造を覚えてるってもんさ。
それに、男の人でスカートを履くのは抵抗があるって人もいるらしいけど、僕はそんなタイプじゃないので。
遥くんが僕の立場だったら一悶着あったかもしれないね。
「ボク元男だよ?スカートなんて履いて変だって思われないかな....」
とか言ってそう。
でもあの子、よく女子っぽいって言われるし、なんだったらクラスの女子が前に
「遥ちゃんにスカートを履かせたら....」とかって企んでたような。
…..やめよう、この話。なんか寒気がしてきた。
制服に着替えたあとは、顔を洗う。
前までだったらすぐに顔を洗えたんだけど、今の僕は、髪が長くなっているから、ヘアバンドで髪をまとめてからじゃないと邪魔になる。
…よし、できた。
長い髪は邪魔だとは思うけど、いろいろなヘアアレンジができて面白いんだよね。
それに「髪は女の命っていうくらいなんだから、大切になさい」
って母さんにも言われたからね。
水だけ洗顔の人もいるけど、うちはちゃんと泡とかもつかってる。
そのおかげで僕はもちもちな肌を男の頃から持っていた。
もちろんそれだけが原因じゃなくて、僕の場合、「素材がいい」んだってさ。
ふう。この八月の季節に浴びる水は一段と心地がいいね。
ところで顔を洗ってて気づいたんだけど、この体になってから肌がいつにもましてもちもちすべすべなんだよね。
ぷるぷるとしていて、赤ちゃんのような肌。
一見よさそうに見えるけど、そうでもないんだ。
実は子供の肌がぷるぷるなのは、肌が未完成であり、外側の刺激から身を守る表皮の厚さが不十分なことにあるからだ。
つまり、本当に僕の肌が若返っているとすれば、外部刺激に敏感になっているはず。
今後は肌の手入れの仕方を工夫した方がいいかもね。
次は朝ご飯とお弁当作り。
基本的なメニューは昨日と変わらない。
あれが一番栄養バランスがしっかりしているやつだからね。
…..んー、卵の在庫数が若干不安。
今日の分はあるだろうけど、明日の分はないかも。
学校帰りに商店街へ寄って買ってこようかな。
あー.....でも、今日は図書の仕事があるんだよね。
だから学校から帰るのが遅くなる。
普通に考えてほしい。こんな女児と変わらない体躯をした人間が夜遅くに歩いていたら補導されるからね。
それに昨日、母さんにも
「これからはなるべく夜暗くなるくらいに帰ってくるのはやめておきなさいよ、ロリコンに狙われそうだし」って言われたし、母さんに買っておいてもらおう。
あー、でも母さんも贔屓目抜きに美人だしなあ....それはそれで危なそう。
まあ、何とかなるか。大人だし。
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