ロリータの誘惑
今日、サロンの入口をくぐりながら、ふと目に留まったのは、ロリータファッションのコーナーだった。
ふんわりとしたスカートにフリルがたっぷりついたドレス、リボンやレースがあちこちに散りばめられたデザイン――見ているだけで、可愛さに圧倒される。
「これも一度は試してみたいな」と心の中で思いながら、サロンのスタッフに声をかけた。
「ロリータファッション、やってみたいんですけど……」と少し照れくさそうに伝えると、スタッフは笑顔で応えてくれた。
「ロリータファッションは初めてですか? それならこちらにいろんな種類がありますよ。どれにしましょうか?」
店内に並べられたロリータ服は、どれも個性的で目を引く。
ピンクのドレス、黒いゴシック風、淡いパステルカラーのドレス――どれも可愛くて迷う。
だが、その一つひとつが明らかに「女の子のために作られた」ものであり、男性の自分には合わないのではないかという不安がよぎる。
「うーん、どうしようかな……」そう悩んでいると、スタッフが気さくに話しかけてくれた。
「初めてのロリータなら、このピンクのクラシカルなデザインがおすすめです。生地がしっかりしていて形も綺麗に出ますよ。」
その一言で、意を決してそのドレスを選んだ。「じゃあ、これでお願いします。」
自分の決断が正しかったのかどうかはわからなかったが、とにかく一度は着てみようという思いが強かった。
試着室に入り、早速ドレスに腕を通す――しかし、予想以上に着づらい。
可愛さに見合わないほどの締め付けに驚かされた。
伸縮性のない生地が体をギュッと包み込み、ボタンを留めるのも一苦労だ。
鏡を見ながら「あれ、思った以上にキツいな……」と呟いてしまう。
ようやくドレスを着終えたころには、肩や腰が少し痛んでいた。
だが、鏡に映る自分は――いつもとは違う姿に変身していた。
フリルが揺れるドレス、ふんわり広がるスカート、頭にはリボンのついたヘッドドレス――まるでお人形のようだった。
「うわ……思ったよりもすごい……」と、思わず声が漏れた。
サロンの鏡の前に出てくると、スタッフが驚いたように目を輝かせた。「お似合いですよ!まるで本物のロリータファッションモデルみたいです!」
その言葉に少し照れつつも、悪くない気分だった。
しかし、実際に動いてみると、ドレスの裾があちこちに引っかかり、重くて動きづらい。
「これ、意外と不便だな……」と思いつつ、何とか歩いてみたが、普段着ている洋服とはまるで違う感覚だった。
さらに、厚底のロリータシューズは不安定で歩きづらく、数歩進むだけでふらついてしまった。
「可愛い服だけど、慣れるまでは時間がかかりそうだな……」そう思いながら、鏡の前に立ち、姿勢を整えてポーズを取る。
写真を撮られるうちに、徐々にロリータファッションの世界に引き込まれていった。
重さや動きにくさも次第に忘れ、ただ「自分が今、別の存在になっている」という感覚に酔いしれていた。
しばらくして、同じくロリータファッションを楽しんでいた他のお客さんが近づいてきた。
彼女(彼?)もまた、ふんわりとしたロリータドレスに身を包み、笑顔で話しかけてきた。
「すごく似合ってますね!初めてですか?」
「ええ、実はそうなんです。今日が初めてで……なんだか、まだ慣れなくて。」と少し恥ずかしそうに返事をすると、彼女はニコッと笑って言った。
「私も最初は同じ感じでしたよ。でも、だんだん慣れてきて、今ではこれが一番のお気に入りです。一緒にロリータでお出かけしませんか?」
その提案に一瞬驚いたが、冷静に考えた。
外でこの格好をするのは、まだ自信がない。「いや、それはちょっと……まだ勇気がなくて。でも、普通の格好なら……」と返すことにした。
彼女は理解してくれたようで、「まあ、確かに初めて外に出るのは少し勇気がいりますよね。いつか一緒に行けるといいですね。」と笑って返してくれた。
その後もサロン内で写真撮影を楽しみ、ロリータファッションの魅力にどっぷりと浸った。
「動きづらいけど、これも一つの魅力だな……」そう思いながら、今日一日を満喫した。
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