〈鋼鉄の拳〉との別れ

 結局明け方まで酒を飲んで、酔い潰れた連中が半裸で寝てた。

 視界の暴力だぞ。


 焚き火をしてるとはいえ、風邪引かないのか?バカは風邪引かないのか?バカなのか?と脳内ツッコミしつつ、ぼんやり葉巻吸ってた。


「もう片付けていい??」

「おー」

「残ってる食材と酒はみんなで分けて」


 器具も持ち寄りなので自分の分は〈洗浄〉して収納。

 他の分は〈洗浄〉して重ねておく。

 ゴンザレスとクレイバーとヴァロ、ギャレットが手伝ってくれた。


「いやぁうまかった」

「最高の宴会だったな」

 それぞれ幸せそうなので良かったなと思いつつ、毎回明け方まで飲むのやめてほしいなと思う。

 初めてダンジョン行くのに寝不足ってな。


「俺は少し寝てくる」

「おー、おやすみ」


 砂浜で寝るってのは野営中ならしてもいいけど、宿があるんだしね。

 コイツら、みんな起きるまでここにいる気なのか。マジ体力お化けたちだ。

 

 俺は宿に戻ってすぐさま〈ルーム〉に入った。シャワー浴びてスッキリだ。

 起きたらダンジョンだから動きやすい格好したいなぁ。

 浅い層に他の冒険者もいるだろうからゴスは控えめに動きやすさを考えつつ、ブラックコーデ。

 創造魔法で厚手のジャケットと剣帯やホルスター、ブーツもバッチリ!

 人目をほんのちょっぴり気にしてフード付きハーフコート。

 あとは足りなければ現場で作れるかな。


 今夜はみんな浜辺で寝てる?から朝までノックされることもなかろうとソファでコーヒー飲みつつ仮眠だ。

 

 目覚ましをセットしておいたので、眠気を残しつつ起きた。


 今日はランガ達がカナンに帰るから、タバコと酒とサンドイッチを持たせるかとスマホでショッピング。

 なんだかんだ世話になったしな。


 メールが入っていたけど、ドリアスたちだったのでスルーだ。


 食堂に降りていくと普通にみんな揃っていた。これが若さと言うものか?三十代もいるが。元気だね。


「おっはー」

「おはよー」


 魚介のスープ?ごった煮みたいなのとパンが並ぶ。

 夜通し食ってたのにもりもり食べてる。胃が強いな。


「昨日のトゲトゲめっちゃ美味かったから、あの後また採ってきた」

「へー」

 どんぶりにして食うと幸せだが米がないんだよ。この世界。パンに乗せるか?

「でも黒い汁がないんだよ」

「あー」

 この街、魚醤くらいないか?

「小瓶で良ければやるよ」

「これじゃすぐ無くなるだろ、どこで売ってるんだ?」

 醤油が売ってるなら俺も知りたいがどこにあるんだろうかね?


「どこで買ったか忘れた」

「かぁー!!外国産ってことだよねぁ」

 まぁ遠いとこなのは確かだ。

「行商に聞くしかねぇのか」

 お、世界を股にかける商人いるのか?


「ジェイル、何でお前は商人にならなかったんだぁ」

 ヤンやロゴスがうるさい。

 ・・・冒険者やってそこそこ稼げれば良いじゃん。

 って思ってたんだけど、神の要求が結構すごい額なんだよな。

 リターンはスキルとか神器とか値のつけようがないもので、しかも神器は人前に出せない扱いにくいものだ。売るに売れないレア物だ。売らんけど。

 このペースで希望を聞くと大金稼がないと神に貢げなくなるか?

 でも商売は面倒。 


「こんな美味いもの買う目利きなら商売向いてるよなぁ」

 サントスやミンミまで頷いてるけど、目利きじゃなくて日本人の当たり前食材なのだよ。


「職業は本人の自由だろ。美味いものは魅力的だが本人にやる気がなきゃ儲からん」

 そうそう。良いこと言うね。ドット。

 タバコと酒でバチくそ儲け出てるけどさ。

 値付けが買い手の言い値で高いってあり得ないよな。

 値切らないんだもん。


「さて、俺たちはギルドに寄ってからカナンに戻る」

「ジェイル、またカナンに来いよな」

「無茶すんなよ」

 ランガたちが出て行くので俺は土産を渡すのにランガたちの部屋について行った。


「これ、世話になったから持っていってくれ」

 シガリロ、三カートン、ワインと焼酎の瓶を五本ずつ、サンドイッチを三人前十食分。


「おいおい」

「マジックバッグに入るよな?」

「新人に貢がせたらカッコ悪りぃだろ」

 だけどな、この世界でいきなり絡まれて、色々構ってもらって気が楽になったからさ?


「次会った時にまた飯奢ってよ」

「お前なぁ」

「ボルクさんとこで朝まで飲ましてやるよ」

「三日くらい宴会だな」

「そこは寝かせてくれよ」


 また会おうって意味で受け取ってくれた。


「これを持ってけ」

 ランガが渡してくれたのは紋章入りのペンダントトップ。

「困ったら騎士団に頼れよ。ま、ニコルやボルクさんの名前出した方が強いが、これがあれば身柄の安全は確保できるだろう」

 おぅ?ランガは騎士団出身なのか?身柄の心配ってなんだ?怖いな。


「ランガが困らないか?」

「バーカ、他にも持ってる」

 そっぽを向いているランガをヤンとヴァロがツンツンして笑ってる。

「そっか、ありがとうな」


 こうして、この世界で初めて遭遇した第一冒険者〈鋼鉄の拳〉とお別れになった。



________________


〈新月の雷光〉

 ドット 

 ドレイク 

 クレイバー 

 シャート 

〈鋼鉄の拳〉

 ランガ

 ヤン

 ヴァロ


〈海の渦潮〉

 アッシュ

 サントス

 ゴンザレス

 ミンミ

 イルナ


〈水平線の彼方〉

 ルーカス

 アイアン

 ロゴス

 ギャレット



ギルマス アントス


船頭 ルカ 妹アン

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る