角砂糖とワイン
進んで行く道は一応整備はされていて、数軒の家がある程度の集落がポツポツ。
酪農業や林業・・・キコリ?とかの集落らしい。
カナンの町を出てポルドスの街までの半分くらいまでがカナンの領主カリュド伯爵の領地だそう。
来た道、ほぼ未開発な森林地帯って感じだけど、儲かってるのかね。
約三時間置きの休憩で、今のところ出て来たのがオオカミくらいって感じで平穏な旅だ。
ケツはだいぶマシになったけど、馬車酔いでコソコソと酔い止めを飲んでやり過ごして来た。
乗り物は平気な方だったけどこれはキツい。揺れる頻度が早いからかな。
二回目の休憩で昼飯タイムで、みんながボルクさん弁当を食べるので俺もそうした。
早めに食って、トイレと言いつつ、少し離れてから〈洗浄〉をかけた。魔法なら髪の匂いは出ないはず。
水分が酒なのも慣れないからペットボトルの水を飲んどいた。
シガリロ咥えながら戻ろうとしたら、穴ウサギが出たので短銃でドンッとな。
銃は見られないようにウェストバッグ(無限収納)に入れてる。
戻らなくちゃなので穴ウサギは収納に入れとこう。お任せすれば勝手に解体されるし。
休憩場に戻れば、ランガたちがシガリロ吸ってた。なんかコンビニ前でヤンキー座りしてる幻影が見えたぞ。
「どこまで○ンコしに行ってんだよー」
デリカシー無し男ヤンめ。
今後の休憩で毎回コレ言われるかな。だがコソコソするためには仕方ないので甘んじて受けよう。
「蛇でなかったかー?」
やだ!トイレ中に蛇出たら叫びそう。
でもいざとなったら、スマートウォッチが危険通知してくれるから多分大丈夫。
馬にオヤツあげたいと御者に許可とって、少しだけならと言われたので角砂糖一ずつあげた。生野菜は夜ご飯とかじゃないとかお腹壊すかなとか思って砂糖にしたんだけど。
四頭の馬たちが「ブヒヒン♪」とご機嫌になったので良かったな。
「それは一体?」
「砂糖」
「「「「「「!!!!???」」」」」」
御者だけじゃなくみんなに驚愕された。
ネットで馬が角砂糖食べて喜んでた動画見たから好きだと思ったんだよ。
「おーまーえーはーアーホーかー!!」
ドットに拳骨ドリルされた。
なんかそのギャグあったよなぁ?
「人間でも気軽に食えねぇのを気軽にやるな!!」
あ、しまった。砂糖がお高いんだった。
「馬が味覚えちゃったら可哀想だろー」
クレイバーにもヤンにも怒られた。
そっか。そこまでの品だったか。
「ごめんなさい」
馬さん、ごめんな。
お詫びにテンサイの種とか出したらもっと怒るよな?
やっちゃったもんは仕方ないと馬車は出発。馬がご機嫌で走ってくれるのだけ幸い。
「ジェイルのぶっ飛び具合舐めてたわ」
「砂糖の塊とか意味わかんねぇ」
「そういやいきなり高級酒を鍋にぶっ込んだって聞いたぞ」
馬車の中でランガたちにめっちゃ笑われて、あたまグリグリされる。
「ボルクさんがお前をしっかり見張れって言ってたのこれかー」
ボルクさん、ランガに何頼んじゃってるの。
「ギルマスにも頼まれたー」
「気を付けようがねぇぞ」
ぐっ!この依頼参加はギルマスたちの優しさか。
カナンって俺にとってチュートリアル的な全部が優しい町だったな。落第点で追試受けてる感じだけど。
「鍋に入れた高級酒ってスキットルの全部入れたんだろ?もったいねぇ!あの肉美味かったよなぁ」
あ、酔っ払って訳わかんないだろう時間に出たのにしっかり味覚えてた!
「お前、草みたいに酒も山ほど持ってんのか?」
え、これって正直に言って良いの?ボロ出さないかチェック??
逃げられない馬車の中で酒に飢えたマッチョに絡まれた俺、泣く。
「あるような無いような・・・」
「「なんだそれー」」
「あるなら売ってくれ」
初対面の日の場面再び。
俺はウエストバッグの中を漁って、三本中身が残ってるうちの一本を出す。
何が出るかな何が出るかな?って、手に取ったのは、よりにもよってワインですわー!!
もし飲んじゃったらこの世界のワインに絶望しそうでヤバいよー。
「えっと売りたくないかな?」
「草は良いのに酒は嫌ってか?」
「そんな出し惜しみするほど良い酒なの!?」
キラキラ目のヴァロとギラギラ目のランガとヤンに迫られる。
いやって言うかさぁ、今後の君たちの幸せお酒ライフのためだよ~。
あ、タバコもすでに他が吸いたく無いくらいだろう。今更かも!?
「うーん?あとで文句言わない?」
「「「言わん!!」」」
絶対だからな。
スキットルを出して渡すとカードゲームを始めた。なぜだと思えば量が少ないから一人分だって。確かに?
ガトゴト揺れる馬車の中でよくやるな。
カードは絵札??数字が十まででポーカーみたいなゲームと判断した。
「やったー!!!」
勝利の雄叫びはヤンがあげた。
「よし!ジェイル、いくらで売ってくれる!?」
えー・・・、確か五千円くらいのを選んだから?
「空になったスキットル返してくれるなら銀貨一枚?で良いよ」
宿ではカップいっぱい銅貨五枚程度だったはず。
「そんな安くて良いのか!?」
ヤンがご機嫌で銀貨一枚渡して来てそのまま飲んだ。
すぐ飲むのかよ?
最初の一口を飲んで。
バターン!!
えええええ!!!!
あぐらで座っていたヤンが上半身を倒して泣き始めた。
「俺は今まで何を飲んでいたんだよぉぉ」
「そんなにか!!」
「飲みたかったーー!!」
次に馬車が止まるまでヤンはチビチビ飲みながら夢見心地で、ランガとヴァロはスキットルから出る香りを必死に嗅いでた。
・・・酒はまだあるけど怖いよな。
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