サルもどき探して


 付与魔法で体が軽くなって、足が速くなった。

 ドットたちが猛スピードで走り出した。

 体育会系だったか。

 人に当たらないは、跳ねる心配がないか、だったのか。


「おーい、ついて来れるか?」

「おんぶするか?」

「抱っこでもいいぞー」


 途中こんな声を掛けてくる。随分舐められてるぞ。行き先は俺が知ってるわけだし、追い越すか。

 俺のステータス、ほぼ全項目チート仕様だぞ。

「おー!俺を超えるか?」

 いや何様なんだよ。Bランク様か。


 俺は運動が嫌いなのになんでこんな羽目になってんだ。


 しばらく追い越したり追い越されたりして、サルもどきに遭遇した場所に着いた。


「やっぱり普段出ねぇ場所だな」

 周りを捜索中、シャートに〈付与〉魔法について聞いた。

「あんなに詠唱?いるんだ?」

 シャートは一瞬不思議な顔して答えた。

「周りに魔導士いなんだ?付与はね、イメージが大事で他人に使う場合は相手が明かりやすい言葉や符号を入れるんだよー。言葉選びなんかはそれぞれなんだよ」

 ふむ。わかりやすいように言葉を使う・・・咄嗟には難しい気がする。


「たとえば。〈足が早くなれ〉だと人間の限界までの速さかなって思う。でも〈馬のように〉って言うと馬の速さをイメージできるでしょ。で〈ユニコーンのように〉ってなると実際見たことがないと早いかどうかわからない場合もあるじゃない?だから誰もが知ってるイメージしやすい言葉を選んで付けるんだよ」

 マジかよ。詠唱大事なのか。


「僕の付与は半日は持つよー」

 半日高速スプリンターでいられるらしい。


「おーい、こっちの方どうだろう」

 クレイバーが何か見つけたらしい。

 みんな集まると木にサルの毛がついてて、付き方からあっちの方だ、いやあっちだと時相談が始まった。


 彼らはサーチとか持ってるのかと思えば、気配を読んでる。結構な広範囲っぽい。

 鍛え上げて経験を重ねて得た感性。

 俺を揶揄う時の顔とは違って超真剣なのはちょっとかっこいいと言える。


 俺、今スマホもウォッチも出せないから役立たずなわけで。

 ウォッチは空中ディスプレイ起動してなくても画面に一応ピコピコ赤い点を出してくれる仕様だ。今のところ小物(ウサギ系とか)しかいないらしくかなり小さいマークが出てる。


 ディスプレイ起動させても周りには見えないはずだけど、俺が何かおかしな事をしてるように見えるわけで、説明する羽目になりそうだから使えない。

 

 ドットたちはサルもどきの足跡や爪痕を確認しつつ、周囲の気配を探ってる。


 やっぱり離れた場所から出てきたのだろうと、サルもどきが巣を作るだろうポイントを探すと洞窟や岩場のある方に行く事に。

 巣を作りやすい場所があるなら潰せば良いじゃないかと思ったけど、影のある場所でしか育たない薬草や食用な獣が隠れて子育てする場所でもあるから、よろしくないのだとか。


 結構な距離を森の中で走った。ドットたちは慣れてるだろうけど、足元が根っこやコブで足首が死にそうなんだが。

 途中でシカと猪をクレイバーが跳ね飛ばした。シャートがマジックバックで回収。

 なんだ?クレイバーが腕につけてる盾は小型だけど一瞬で大きく広がったように見えた。魔道具??


「よし!ここらで休憩だ」

 まだ朝十時と言ったところだが、この先はゆっくり出来ないだろうと言うことだ。

 木にもたれて座るとそれぞれ水分(ワイン)を摂る。

 濃厚過ぎるんだよなぁ。漉し加減??


「お弁当~食べちゃおう」 

「はえぇよ」


 結局シャートのおねだりが聞いてお弁当タイム。

 堅いパンと肉と芋がサンドされている。

 サンドウィッチ??

 と、思ったらパンと肉を交互にして食べやすく切り分けて串刺しにしてある、肉串の仲間扱いらしい。

 パンも焼いて肉と同じ塩味が付いてた。

 

 ゆっくり食べてるわけにもいかず、ドットたちの真似で早食い。

 クレイバーが近寄ってきて俺の隣に座ると、

「ジェイル、一服しようぜ。一本ちょうだい?」

 一服が出来るだと!!

 クレイバー好き!!一本どころか一箱でもどうぞ!!

 ポッケから取り出して、クレイバーに一本、俺も一本、マッチ・・・を使いたいところだけど、みんながやってるように指先から火を出して着ける。


「「ふー」」

 うまぁー。煙の向かう先を眺めると枝葉の向こうの空が見える。

 俺、もう森から出たいな。


「お前ら草なんか買うより酒のがお得だろ」

「そうだぞ。酒と女の方が幸せをくれるぞ」


 酒がお得とは言い過ぎ・・・いやこの世界の煙草やたら高い。葉巻一万円。


「どっちも好きだけど、この草はなかなか」

 クレイバーが嬉しそうだからかシャートが近づいて来て、クレイバーのタバコに鼻を寄せる。


「これ、嗅いだ事ない匂いだな」

「シャートも吸う?」

「いらない~、その草はお腹の足しにならなぁい」

 

 そこらへんの草でも食べれば、お腹には溜まるけど、煙草は確かに腹は膨れないな。


「俺は酒のが良い」


 休憩を終えて、またサル探しに戻ると、ドレイクが木に痕跡を見つけた。




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〈新月の雷光〉

 ドット 

 ドレイク 

 クレイバー 

 シャート

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