ボルクさんオコです
宿に戻るとボルクさんが下拵えしてた。
「おう、来たか」
遅かったなって言われないのは何かしら時間が食うこと分かってたかな。
「ボルクさん、ギルマスとジョズさんが宴会に参加したいって」
「・・・そうか」
呆れたっぽい声で「あいつら」ってぼやいてる。
クマ肉十キロをボルクさんに渡して、買い込んできた追加の肉、肉屋でおすすめされた鳥。
野菜と香草とか買ってきた。
「こんなに買ってこなくてよかったのに」
ボルクさんが俺の頭を乱暴にグワシっと。
「・・・硬いな」
あー、ワックスかな。ハードワックスでサイド流してたんだ。よりによって今日頭触られるとは。
「ちょっと油で固めた」
風呂ないしみんなそうそう頭洗ってないなら毛ガシガシしてるよな?似たようなもん。
「油で固めるのもそんな髪を綺麗に輝かせてんのも平民にはいないぞ」
!?!?!?
なんとー!!
なんかポツポツ聞くには、俺のことはやっぱ貴族のヤンチャ坊が気まぐれ起こして冒険者になってフラフラしてるって町の人に思われてるってさ。
で、普通の人は貴族に関わって怒らせたら殺されたりされかれないから遠巻きにしてる。
高ランク冒険者の人たちは貴族と接点があったり、それこそ貴族の三男以下の冒険者は存在してて接することに慣れてるから、平気で構ってくれる。
そっかー。貴族にしか見えないのか。
そりゃ俺の元になった推したちは美しさが半端ないから「さもありなん!」だな。
髪の手入れって言ってもシャンプートリートメントで、使わないのは気持ち悪いんだよな。少し髪を切るか?
「金髪って貴族だけなのか?」
「貴族の落とし胤なんかはいるし、茶色や黄色が煤けた金髪ならたまにいるが光輝く金髪はいないな」
それは良いお手入れができてないだけー。
「お前のような透けるような繊細な銀がかかったような金髪は貴族でも珍しい」
んおー!そこまでか。
どうする俺!!
ショッピングでヘアカラー買うか?
って言うかこの町でそこらにいるオレンジとか緑とか青とかの方が変わった色だと思ってたぞ。黒と茶色が少ないって。
アニメだなぁって!!!
「でも俺貴族じゃないから」
「・・・そうか」
なんか放逐か追放された貴族令息とか思われる可能性あるのかって一瞬思って聞いたら、金回りがいいのと荒んだ感じがないからそれは無いって。
そりゃ元の俺はアンナや会社のあれこれで疲れてたけど今は楽しいからなぁ。
「うーん、金はちょっと一発当てたって言うかなぁ」
「ギャンブルか!?」
ってなんか凄まれた。やめとけよって。
もうやらない(やれない)って言えばホッとされた。この世界のギャンブル超やばいのかな。
冒険者だってギャンブルじゃね?
「それよりボルクさん、準備しよう。手伝っていいだろ?」
「ああ」
まずは適当に肉を切り分けて。
やっぱ煮込みと焼きとって感じ。
余計なことをするとレシピ登録って言い聞かせて自分の好みは言わないぞ!
その代わりニンニクや香草でパンチ効かせようとたくさん用意したら睨まれた。
でも止めないってことはOKだよな?
なんかこのクマ肉、独特の臭みが強かったんだよね。そうなるとハーブもいいけど、入れたいじゃん?
「ちょっと臭み消しー」
不思議なポケットからスキットル~☆
煮込み始めたお肉にブランデーじゃばば。
日本酒が良かったけどスキットルに入れてないからさ。ブランデーもたまに使ってたけどありよ。
芳醇な香りが~♫
「おい!お前そんな高そうな酒を料理に!?」
ん?この世界では料理にワインとか入れないの?
「・・・お前は変だ」
えええ~!!
ボルクさんが可哀想な子を見る目で見てくる。
「それを少しくれ」
スキットルを指差して言う。
匂い嗅いだら飲みたいよね。
コップに残り全部入れたらまた変な顔されたけど、酒とタバコはケチケチしたら不味くなんのよ。
「・・・」
くんくん匂って、一口。しばし黙考。
からの目をかっぴろげて一気。
「いいか!ニコルとジョズに絶対酒を出すな!こんなドワーフがぶっ飛びそうなもんホイホイ出すなよ!!」
ドワーフいるんだ!
って言うか怖いぞ。コップ割れんばかりに握りしめてるボルクさん。
そうお高いブランデーじゃなかったんだが。
「あんれ!あんた坊やに怒鳴りつけてどうしたね」
エンマさんが二階から降りてきた。部屋の掃除とベッドカバーの交換してたらしくて籠に洗濯物いっぱいだ。
重そうだと籠持とうとしたら男臭!
「ゔぉえ」
これが風呂無し冒険者生活のリアル!!
「あはは、坊やは綺麗好きだからダメとよ。いつも綺麗にお部屋使ってくれとうね。ありがとうと」
「おい、これ味を見てくれ」
ボルクさんがさっきの煮込み中のお肉をちょいと切り分けてエンマさんに差し出す。
エンマさんは籠を一旦置いて。
「まぁ!なぁにこれ。香りがとても良いしお肉もとっても柔らかいとね」
「ブラックベアだからいつものベアより柔らかくてうまいだろうが全然違うだろう?」
うーん。またやっちゃったか。
まさか料理に酒を使わないだなんて。
「お酒を入れたと?お酒は飲むものとね?」
「えー?余った酒とか少し古くなった酒入れたりしないの?」
夫婦で俺を信じられない顔で見た。
「それは古くない上等の酒だったろう」
「俺今古いの持ってないし、肉の臭み消したかったんだよ」
たかが酒でめっちゃ怒るやん。
「臭みは草で消せるだろう」
草!料理用もタバコ用も草!わかりにくいぞ!草!!!
「こんちは〜!!にいちゃん!酒もってきたよぉ〜!!」
入り口が空いたら大きな声で酒屋さん。
おい!タイミング〜!!!
「ワインとエールお待たせっすよ!」
ゴロゴロ樽を転がしてカウンターまで運んでくれるのはここに慣れてるんだろう。
「マスター!良いお客さんっすね!にいちゃんありがとな〜」
陽気な酒屋、空気は読まないな。ニコニコ帰っていったぞ。
「あんれ〜!」
「ランガたちとギルマス来るから酒足りないかなぁって?」
テヘってやってみたらまたアイアンクローだ。
「お前の金遣いは相当やばいぞ!少し考えて使え!!」
いやん!お前は俺の親父か!?
なんて人情深いんだ。
「そうとね!坊やはカモにされそうと!ちゃんと普通の暮らしに馴染まんとよ」
あ、やっぱ坊やはお金持ちの坊やってことか。
俺が厨房にいると気が気じゃないって追い出されちゃったよ。
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