第2話: 奴隷市場への道

レンは朝の光が差し込むアルヴァナの街を歩きながら、心を整理していた。6級ダンジョンをクリアし、今は次なる冒険への準備を始める時だ。彼は、先日のダンジョンでの経験から、自分一人の力だけでは限界があることを痛感していた。これから挑む5級ダンジョン「炎の迷宮」では、より強力な仲間が必要だと確信していた。


アルヴァナの街は早朝にもかかわらず、既に賑わいを見せていた。市場で品物を売り買いする商人たちの声、鍛冶屋のハンマーが金属を打つ音、そして冒険者たちが次なる依頼を受けるためにギルドへ向かう足音が混ざり合い、活気に溢れていた。レンはこの街の賑わいを横目に見ながら、自らの決意を胸に秘め、奴隷市場へと向かっていた。


「次のダンジョンには、一人で挑むわけにはいかないな…」


レンは心の中でそう呟いた。彼の持つ「無限成長」のスキルは強力だが、一人で全てを成し遂げるには限界がある。特に5級ダンジョンは、これまでとは次元の違う危険が潜んでいることを知っていた。だからこそ、頼りになる仲間を見つけることが急務だった。


「奴隷か…」


レンは足を止め、しばし考え込んだ。エルトリアにおいて奴隷制度は当たり前のものとして存在しているが、彼にとっては少し引っかかるものがあった。元の世界では人を奴隷として扱うことなど考えられなかった。だが、この異世界の現実を直視し、次の冒険を成功させるためには、奴隷制度を利用することも必要だと自らに言い聞かせた。


「仲間として、共に戦ってくれる存在が必要だ。それも、強力なスキルを持ち、成長できる者が…」


レンは再び歩みを進めた。炎の迷宮に挑むためには、炎に対抗できる力や魔法を持つ者が最適だろう。自分は前衛で戦うが、サポート役として魔法使いがいれば、さらに戦術の幅が広がるはずだと考えていた。


街の南に位置する奴隷市場へと続く通りに入ると、街の喧騒とは少し異なる雰囲気が漂っていた。奴隷市場は、他の商業エリアとは異なり、重々しい空気が漂い、商人たちが静かに取引を行っている。レンは市場に向かう足を少し重く感じつつも、意を決して進んでいった。


「奴隷市場へ向かうのは初めてだな…」


市場の入り口に近づくにつれ、奴隷として扱われている人々の姿が見え始めた。彼らは無表情で並んでおり、肩に重い枷をかけられている者もいた。レンはその光景に少し戸惑いを感じたが、それでも彼の決意は揺るがなかった。彼はこの場所で、自分の戦いに必要な仲間を見つけなければならないのだ。


市場の中では、様々な奴隷が売り買いされており、その中には戦士や魔法使い、さらには異種族の者まで様々な背景を持つ者たちがいた。レンは目の前に広がるこの光景を見つめながら、これから自分が選ぶべき仲間についてさらに思案を巡らせた。


「俺が求めるのは、ただ強い奴隷じゃない。信頼できる仲間だ」


レンは自らにそう言い聞かせた。奴隷という立場にあっても、自分は彼らを道具として扱うつもりはない。むしろ、共に成長し、共に戦い抜く同志として接したいという思いが強かった。彼のスキル「無限成長」は仲間の力をも引き上げる特性がある。だからこそ、選ばれる仲間は適切なスキルと潜在能力を持った者でなければならないと感じていた。


「次のダンジョンは『炎の迷宮』。炎に耐性がある者か、強力な魔法使いが必要だ」


レンは頭の中で次なる仲間の条件を整理しつつ、商人たちの声に耳を傾けた。市場には様々な奴隷商人がいて、各々が自慢の奴隷を売り込んでいた。レンはその中から、自分に必要な存在を探すため、じっくりと観察を続けた。


奴隷商人たちは、それぞれの奴隷の特徴を熱心に説明していた。強靭な肉体を持つ戦士、素早い身のこなしを持つ盗賊、そして様々な魔法を操る者たち。レンは彼らの言葉に耳を傾けながらも、自分が本当に求める仲間がどこにいるのかを慎重に見極めようとしていた。


「どの奴隷も、ただの力自慢ではない。だが、俺が探しているのは、共に成長できる存在だ」


そう考えながらレンは、奴隷市場の中央にある広場へと進んでいった。そこにはさらに多くの奴隷が並んでおり、彼らの中から次なる仲間を見つけることができるのだろうと感じた。


市場の喧騒の中、レンは次第に心を落ち着け、冷静に状況を見極めようとしていた。彼が探しているのは、単なる強者ではなく、自分の無限成長のスキルを活かしてさらに強くなれる仲間だ。奴隷という立場にある者たちの中にも、必ずそのような人物がいるはずだ。


「ここからが本番だな…」


レンは市場の中を見渡しながら、自分の求める仲間との出会いを待ち続けた。



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しばらく1日2話ずつ更新(17:00、18:00)していきます。


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