アウター・サイドアップ。その苦悩と、その葛藤。

無名のサブ

プロローグ

「んっ! んんっ!!」

 

 目隠しと布でできた口枷をつけ、オレンジ色の囚人服を着た筋肉質な男。彼には手錠もついており、椅子に固定されている。

 人は彼の事を犯罪者と言うらしい。かわいそうに、今日は死刑執行日だ。そして、彼の能力は私が奪う事になった。

 彼はもう助からないのに、必死に身を捩らせて抵抗する。そんな彼の姿は陸に上がった魚のようで、まるで無様だ。


「これも世界の為だから」


 そう言って私はナイフを手に取ってから彼に近づき、やいばを立て——

 

  ——深く刺した。


  ——深く刺した。


  ——深く刺した。


 1回目で、彼は大きな雄叫びを上げた。

 2回目で、彼の血液が部屋中に飛び散った。

 3回目で、彼の雄叫びは聞こえなくなっていた。


「死ね、死ね、死ね——」


 何度も何度も刺している内に、いつの間にか私はそんな事を言っていた。

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