震天冷嵐の靴〜シンデレラ・シューズ〜
加賀倉 創作【コールドスリープ中】
第一話『右足にガラスを、左足にコードバンを』
——真夜中、二十四時〇〇分。
ピピピ
音声通信が入った。
「
声の主は、国防大臣の
「はい、大臣」
わたしは、ハキハキと答える。
「今日は忙しいぞ」
「と言いますと?」
「まずは毎度のごとく地震エネルギーの小出し作業。次に豪雨の阻止。それから、
「なるほど、盛りだくさんですね。では、詳細をお願いします」
「地震エネルギーの小出し作業だが、座標は、南緯三五度四〇分三三・二秒、西経一三九度四四分四一・九秒。人も動物もほとんどいない山の奥地だ。マグニチュードは五・〇程度、震源は四キロから五キロの間で頼みたい」
「承知しました」
「
「万全です」
「そうか。ならよかった。で、豪雨の阻止。地震エネルギー小出し作業が終わり次第、そのまま南西方面の空に向かって、
「
「ああ、それを聞かれてしまったか」
なんだなんだ。
「も、申し訳ございません。無理に深掘りするつもりはありませんので」
「いや、この際言ってしまおう。実は明日、息子が観戦を楽しみにしているサッカーの試合があってだな……」
はぁ。また、あの
「なるほど、聞かなかったことにします」
「お気遣いどうも。で、
「この上なく快調です」
そうですとも。空をあんたの息子だと思って、ビームをぶっ放してやりますよっと。
「そうか、それはよかった。ならその足でそのまま、国際法違反の連中にも
「承知しました」
「重々承知しているとは思うが、もはや
「はい。理解しています」
「そうだ、東雲……」
「はい?」
「いつも息子が、迷惑をかけてすまない……」
「あ、はい。別に、全然。ええ、どうってことはないです」
うわぁ、明らかに動揺したなぁ、わたし。
「そ、そうか。じゃあ……今日は仕事が多いが、よろしく」
「はい……」
プツゥン
通信が切れると、わたしは
大きなクローゼット。中には、全く同じ見た目の衣装がずらり。涼しげな、
右はガラス製。
左は
共に、
左足、右足の順で、素足を入れる。
地面に向け、左のつま先をトントン。
意地でも手を使いたくない
次いで右のつま先をトントン。
キィーン! ピキピキピキ……
体が五〇センチメートルほど、上昇するのを感じる。
「ああっ!!」
うわぁ……またしくじった。
右足のガラスの靴は、つま先から、よくわたしの体重を支えられるなぁ、と思うほどに細い氷の柱を伸ばし、
パキン! バラバラバラ……
氷は砕け落ち、わたしは無事着地する。
「ふうぅ……」
いい加減、この『
右足のガラス製の靴は冷却機能を備えている。これで地面を凍らせて、アイススケートの要領で滑走する。ちなみに滑走時は、右のガラス製の靴で片足立ち。左の靴は摩擦係数が高いからね。おかげでバランス感覚と右のふくらはぎが鍛えられた。
左足のコードバン革靴の特徴はパルス機能。氷の上を滑る時は、これで、凍っていない地面を、出力を控えめの
そういうわけで、これら二種の靴の能力で移動が極めて楽になる、というのは……まだ序の口だけどね。
さぁ、夜勤と行きましょうか。
わたしは玄関を出ると、暗闇の中、氷上をフィギュアスケート選手のように華麗に舞いながら、
〈第二話『お天気おねいさん
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