出店の誘い
「詩乃ちゃん! 後3日で文化祭だね!」
「う、うん。私は別に興味ないけど」
放課後午後6時、クラスでは文化祭の準備で賑わっていた。ノリノリな私に対し、詩乃ちゃんは関心なさそうな素振りを見せている。
「ええ~、文化祭の実行委員としてそれは心外だなぁ。こうしてせっかくみんなが頑張って準備してるんだからさぁ」
「…………」
私は詩乃ちゃんに向かってむくれっ面をする。詩乃ちゃんはちょっと申し訳なさそうに目を背けた。
「ところでさ、詩乃ちゃんはやっぱり出店とかしないの? せっかくの文化祭なんだから何かやったほうがいいと思うよ」
「わ、私はいいよ。家のことで忙しいし」
「ええ~、文化祭は1年で1回しかないんだよ。たまには家族のこと忘れたっていいじゃん!」
「う、うん……そう、かもね」
詩乃ちゃんは考え込む素振りを見せる。
ちょっと迷ってるのかな? ならあと一押し。
そう直感して私はさらに言葉を畳みかけた。
「詩乃ちゃんってほら、詩書けるじゃん? そういうのは絶対人に見せたほうがいいと思うよ。せっかく書ける才能を持ってるんだからさ。詩集とか出してみない?」
「…………」
詩乃ちゃんは顔を俯けて押し黙ってしまう。
ああ、この感触はやっぱりダメだったかな?
この前は詩乃ちゃんのこと怒らせちゃったし。
「……うん、じゃあいいよ、出しても。……詩集」
「!!」
私は驚いて、思わずまじまじと詩乃ちゃんを見つめる。
詩乃ちゃんは途端に恥ずかしそうに顔を俯けた。
「その、美麻里ちゃんがどうしてもって言うなら、私、自分の詩、出してみてもいいよ。……人に見せるのは初めてだけど」
「あれ? いま私のこと『美麻里ちゃん』って呼んだ?」
「あっ……」
そして詩乃ちゃんは更に顔を赤くする。
私は嬉しくなってニコニコと笑った。
それを見て、詩乃ちゃんはちょっとむくれっ面になる。
「い、言ってないよ」
「ええ~、言ったじゃん」
「言ってないって!」
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