#015

――ブレシングとリョウガがムーグツー内で対峙している頃。


スペースコロニーの外ではイーストウッドが連合国軍のスペースバトルシップであるレインボー内で立ち尽くしていた。


「バ、バカな……。我が艦隊がこうも簡単に……」


イーストウッドの目の前では、彼の誇るレインボーの大艦隊が次々と墜とされていた。


その中心にいるのは、スカーフを巻いたオールバックの男――ノピア·ラッシク将軍だ。


彼は数人の部下を率いて、背負ったジェットパックから飛ばす円形のユニットRELAY-Gで、バトルシップを破壊していく。


宇宙空間で人間が問題なく動けるのは、宇宙ように改造したジェットパックによる効果と、もう一つの装置――。


ホログラフィック·プロテクションスーツ、通称HPスーツのおかげだ。


以前にソウルミュー·ライクブラックによって開発された簡易的防護服であるHPスーツ。


人間の身体は当然宇宙空間で生きてはいられない。


そのためこのバッジ型のスーツを体に付けることで、装着した者の全体にバリアーが貼られる防護服を使用する。


ストリング帝国は、連合国軍の宇宙開発で発展した技術を、どこからか手に入れていたようだ。


ノピアが放つ円形のユニットが凄まじい回転をしながらバトルシップへと襲い掛かり、彼自身もまた真っ赤な光剣――ピックアップブレードを振るって暴れ回っていた。


その後方からは、帝国のスペースバトルシップであるムーラディアンが援護している。


ムーラディアンは――。


全長百八十二メートル、全幅四十八.四メートル、総重量二十トン。


レーザービーム砲十門、大型レーザービーム砲二門が取り付けられたストリング帝国の宇宙戦艦である。


これもまた連合国軍のバトルシップであるレインボーを、帝国が独自に発展させたものだった。


「何をしているッ!? 数なら我々のほうがまだ上だろうッ!」


バトルシップ内で全艦隊に叱咤しったするイーストウッドだったが。


突然の奇襲や予想外の帝国の戦力に浮足立ち、もうここから逆転などできる状況ではなかった。


《無様だな、イーストウッド》


そのとき、イーストウッドの乗るレインボーの通信機器から声が聞こえてきた。


イーストウッドはこの声を知っている。


その声はかつて共に戦った男――。


この襲撃の主犯だと思われるノピア·ラッシクだ。


「ノピア·ラッシクッ! 貴様、一体何が目的でこんなことをッ!」


《連合国は大きくなり過ぎた。今や肥えて使えなくなった馬ほどにな。それを私が、かつての英雄たちに代わって粛清しようというのだ》


「何が粛清だ! 貴様のやっていることは人類発展の妨害だぞッ! そのことがわかっているのかッ!?」


《言いたいことはそれだけか? 私は伝えたいことは伝え、お前の言葉も聞いた。もし、私のやっていることが気に入らないのならば力で来い。お前たちがずっとやって来たようにな》


「くッ!? ノピアッ! ノピア·ラッシクゥゥゥッ!!」


そこで通信は切れ、イーストウッドの乗るバトルシップは火の海に包まれた。

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