第21話



だがテロの可能性を考慮しながら幾度も内容を調整し、結果的に城の一部が破壊され、金と時間と人員を費やした。祭典も規模を縮小した為諸外国への宣伝効果は例年より薄いだろう。得た物より失ったものの方が遥かに大きい。


いつの間にか地上からのぼる煙は見えなくなった。テラスへ出て見ると広場には誰もおらず、テントや国旗が倒れて酷い有様だった。

怪我人の手当も片付けも大変だ……。


爆弾を撤去したことを軍に報告し、再度体制を立て直した。

この国が攻撃されたことはすぐに世界中に広がり、ランスタッドを含めた四つの国で緊急会議が開催されることが決定した。国の最高責任者が出る為、恐らくローランドが出席する。


「ノーデンス様、ご無事でしたか! ああ……良かった~」


救護室で擦りむいた掌を消毒していると、憲兵に案内されてオッドが駆け寄ってきた。そして周りに聞こえないよう、そっと声を潜める。

「爆弾を取り除いたんですって? 貴方のすごさは知ってますけど、無茶はしないでください。そもそも兵士じゃないんだから、危険な現場に行く必要はないんです!」

「すまんすまん、どんな爆弾を使ってるのか調べたかったんだ。ほれ、ちゃんと収穫はあったぞ」

「えっ!」

オッドの反応がとても良かったので、ポケットから破片を取り出し、彼に手渡した。

「え。何です、これ」

「爆風を受けた城壁さ。お前は何も感じないかもしれないけど、強い気を感じる。恐らく連中のひとりに神力を扱えるやつがいる……。この爆弾は普通のやり方じゃ解除できない」

「それじゃあ……」

「敵に回さないことが懸命かなー」

場所を変え、無人の倉庫室に入った。置かれているラジオを流すと、先程のテロ事件のことがずっと取り上げられていた。


「……勝手な憶測だけど、奴らはもうしばらく攻撃してこないよ。ヨキートのテロ事件の時も、今日まで一年は空いてるだろ? きっと奴らはのんびり暴れる組織なんだよ」

「慎重な、って言う方がしっくりきますが……とにかく疲れたでしょう。城の警備を再度強化しましたし、ひとまずお休みになってください。ノーデンス様、とても顔色が悪いですよ」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る