情報

 仮面の一団のアジト。

 僕は今、そこに案内されていた。

 とはいえ、空港全体をアジトとしてうまく有効活用していたようで、自分が通されたのは会議室として使っていたらしい荒れ果てた空港内部の一つの事務所であるわけだが。


「まずは私の名前から。私はジュリア。今はもう、ただのジュリアで覚えて欲しいわ」


「えぇ、わかりました。自分の名前は要りますか?」


「調べさせてもらいました……私たちが知らないのが不思議なほどに有名な方でしたね。本当にこちらが無礼を重ねてしまったようで……」


「別に構いませんよ。名誉欲とはないので。そんなことよりも、本題に入りましょう」


「わかりました」


 自己紹介は手早く済ませ、早速本題の方へと入っていく。

 僕も別に全世界の人々は自分の名前を知っていて当然だ!なんて拗らせた考えはしていないからね。


「まずは、こちらが私たちが調べた人理教についての調査報告書です」


「……ふぅむ」


 その書類を受け取る僕はその文字列に目を通していく。


「こちらが人理教について書かれた新聞。そして、こちらがイタリア警察の調査記録です」


「おぉー、随分と色々あるんですね」


 僕は思ったよりも出てくる書類の数々に歓喜の声を漏らす。

 ここまで色々と持っているとは思っていなかった。まさか、イタリア警察の情報まで握っているとは……この仮面の一団が調べ上げたという調査記録もかなり詳細だ。


「一応、私たちの方もイタリア政府からの認可が下りている自警団ですので。対人理教。人理教について徹底的に調べらあげる……あの、カルト教団の手によって身内を亡くした私


「なるほど」


 非常に、非常に興味深い……僕は手早くすべての文字に目を通していく。


「何か、まだ必要な情報とはありますか?我々にあるものでしたら、何でもお渡ししますよ」


「それは、ありがたいですね」


 そんな僕へとジュリアさんが声をかけてくれていた中で、自分はゆっくりと立ち上がる。


「……その前に、お客さんのようです」

 

 その理由は何故か。

 簡単だ。

 ここで悠長に書面とにらみ合いっこしている暇ではなくなったからだ。


「……また、一人みたいですね」


 こちらの方に、一つの人影が空を駆け抜けて近づいてきていた。

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