アジト
僕からの真っすぐな視線。
「えっ……あっ」
それを受ける女性はまず、言葉を詰まらせる。
「……まずは貴女を人理教だと疑ってしまったことの謝罪を」
だが、すぐにまた次の言葉を話し始める。
「謝罪を受け取りましょう。これに関しては、僕の非もあるのでもとより気にしていないのでお気になさらず。それで?」
「そ、それで、私たちが人理教なんじゃないかという疑いに関してですが、それに関しては完全なる誤解です。我々は人理教に立ち向かうために結成された組織ですから。そこは、疑わないで欲しいです」
「良いでしょう。ひとまずは信じましょう。貴方がたでは自分に勝てないことは一目瞭然ですからね」
まぁ、端から人理教だとは思っていない。
弱そうだし。今、自分を囲っている面々はおそらく、日本の高校生のダンジョン部とかにも負ける。全然強そうではない。
「……ありがとうございます。あの、よろしかったら何ですが」
「はい」
「私たちのアジトに来ませんか?そこで、人理教について私たちが知っていることをお教えしたいのです」
「……あー」
僕はその言葉を受け、少しばかり頭を悩ませる。
ちょっとだけあり。
現地の人間から人理教について聞くというのも……ただなぁ、案外僕にはやることがある。呑気に観光していたとはいえね。
僕がこれから対処しに行こうと思っていた魔物は割と緊急性の高い案件だったんだよねぇ……観光はしていたけど。
「また、これは……少し、お恥ずかしいような話なのですが、実は私たちのアジトの方が今、魔物の手によって占拠されてしまっているような状況にあるのです」
「んっ?」
「本当に、恥ずかしく、厚顔無恥極まるのですが……良ければ、私たちにお力を貸してくれないでしょうか?私たちのアジトの開放に、どうか……お力を」
「……あー、そのアジトというのは、もしかして、ここからちょっと離れたところにある空港のことでしょうか?」
「あっ、はいっ。そこのところです。ご存知、でしたか?」
「なるほどね。元々、そこには行こうと思っていたんですよ」
ここから少し離れた位置にある、海沿いの空港からは結構強めの魔物の気配を感じられていたのだ。
元々、そこには行こうと思っていた。
「そこからじゃ自分が直接行くべきだと判断出来るような強力な魔物がいましたので。元から行こうと思っていましたから、そのついでとして、アジトの方で人理教の話についても教えてくれると嬉しいです」
「本当ですかっ!ありがとうございますっ!」
そのため、僕は行くつもりである旨を伝えたところ、目の前にいる女性は喜びの声をあげてくれるのだった。
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