金策

 境内の隣にある自分たち神主の一族が暮らすための家。

 そこには今、実に濃厚なピザの匂いが立ち込めていた。

 実に久しぶりの、この家で嗅ぐ料理の匂いだ……もう、匂いだけで感動出来る。


「それで?今、具体的にここの収入源はどうなっているんだ?」


 なんてことを考えながら黄野くんに感謝してピザを食べていた中、そんな僕に黄野くんが疑問の声を投げかけてくる。


「もぐもぐ……っごく。……えっと、収入源だっけ?そんなに多くはないけど、年始の時に来てくれるおじいちゃんおばあちゃんの御賽銭。それと、ごくたまに来る怨霊関係の話かな?あとはこの街の鎮魂祭などの神事もやるよ。七五三とかもそうだね。通年で……百万くらい行けばいい感じ、かな?」


 まぁ、それらすべてが少量なんですけどねぇー。

 田舎に新しく立つ建物も、子供もいない。寂しいばかりだ。


「それじゃあ、本当にダンジョン関連の収入は一切ないんだな?」


「うん、一切ないね。配信に関しては、あくまで神様から頂いた力が前にあるのではなく、僕を映す。つまり、僕を前に置いているよね?っていう論理でぇ……やっていることが同じでも、それが誰かというのは結構大事じゃない?」


 僕もよく見るゲーム配信者グループとかあるけど……そのメンバーがごっそりと変わった上で、これまで通りの企画をぶつけられてもなんかちょっと違うかな、ってなるから。

 やっぱり、配信に関して重要なのは誰がやっているのか、という点だと思うんだよね。

 だから、セーフ!セーフなんだよっ!


「配信でちょっとしたフィーバーが起きたけど、今はもう配信とかあまりしていないから……一気に稼いだお金とかも、神社で直して欲しかったところを直してもらったらなくなっちゃった。何なら、少しの借金に……まだ、過去の分からも収益が今も入ってきているけど、それらは全部借金へと」


「……」


「で、でも、これは仕方ないんだよ?元々、神社の水道が壊れていて、こっちの方に水道がなかったんだからっ!」


「ど、どんな環境で……クソっ、そうだな。冒険者ギルドとか、政府とかからもっともらえないのか?あくまで寄付という形で」


「いや、そこらへんは全部僕が断っているから」


「……何で?」


「独自性を保つため、かな……別に僕たちは金儲けの為に動いているわけじゃないからね。下手にお金を入れて、そのお金に目がくらんでしまうような状況は作りたくないんだ」


「……その心意気は立派だが、滅私しすぎだ」


「へへ」


 そうあれというのが数少ない親の教えなもので。

 少しは優しくしてくれていた亡き祖父の教えでもある。


「……金策、金策かぁ。やっぱ、神社の収益を増やすのが一番だよな。甘夏にも協力させてここの環境を整え、お前の配信でこの神社を売り出せよ。お前がらみの話はほとんど表舞台には流れてきていないけど、それでも何となくお前が神社関連なのはわかっている。お前が宮司をやっている神社とかご利益しか感じないだろうし、普通に参拝客増えるだろ」


「……確かに」


 僕を売りだすよりも、確かに神社を売り出す方が早いじゃん。


「……これは良いのか」


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