第13話 呟き

夜、ロイは鉱山の奥にある奴隷たちの寝床ねどこへと歩いていく。

 体中が痛みで悲鳴を上げていた。


 石で覆われた寒い洞窟の中、奴隷たちは一言も交わさず、それぞれの場所に倒れ込んでいた。

 また、冷たい床に横たわり、疲れ切った体を何とか休めようとする。


(こんなところで…眠れるわけがない…)


 心の中で呟いたが、現実は容赦なく、体は動くことさえできない。

 昼間の重労働でできた豆は痛みを増し、肩や腕、足の筋肉がすでに悲鳴を上げていた。


 洞窟の天井を見上げても、そこにあるのはただの暗闇。

 家族の温かい家とは比べものにならない冷たさが、心まで凍えさせる。


「母さん…父さん…」


 小さな声で呟いたが、誰も答えてはくれない。

 それが、今の僕の現実だった。

 涙がこみ上げてきたが、泣いてもどうにもならないと、唇を噛みしめて耐える。


 隣では、他の奴隷たちも同じように疲れ切って眠ろうとしていたが、誰も一言も発しない。

 孤独が、胸にじわじわと広がっていく。仲間がいるはずなのに、この洞窟の中は限りなく冷たく、寂しい。


「どうして…こんなことになったんだ…...?」


 自問自答しながらも、答えなど出るはずがない。

 目を閉じても、暗闇の中で家族の顔が浮かんでは消えた。


 その時、近くから微かな声が聞こえた。


「君も…家族がいるの?」


 僕は驚いてその声の方を見た。

 暗闇の中に、同じ年頃の子供が目をせたまま、こちらを見つめているのだった。


「…うん。いる。」


「そうなんだ......。僕も…家族がいてね。

 会いたいんだ…でも、連れ去られてからはこのまま…」


 その子の声には、絶望がにじんでいた。

 自分の孤独と恐怖が重なり、胸が締め付けられそうだった。


「きっと..会える!…絶対にな!」


 根拠もないことを奮い立たせるように発した言葉は、

 自分自身に向けられたものであることに気づきながらも、気づかない振りをする。


 その子は弱々しく微笑み、

「そうだね…きっと…会えるよね…。」


 その後、しばしの沈黙が流れたが、その小さな会話が、ロイにとっては大きな救いだった。

 たとえ暗闇の中でも、誰かと繋がっている感覚が、ほんの少しでも孤独をやわらげてくれた。


「おやすみ…」ロイはそっとつぶやく。


「おやすみ…」その子も静かに答えた。


 ロイは目を閉じ、心の中で家族の姿を思い浮かべながら、冷たい石の床の上で眠りに落ちる。

 明日もまた、過酷な一日が待っていることを知りながらも......。

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