ジョブスキルが正体不明で実親に捨てられたわ~気づいた時には剣帝ッス~
富弥達ゆづし
プロローグ
第1話 嵐の夜
メルガード王国の片隅、小さな村が嵐の中心に立たされていた。
強風が家々を揺さぶり、断続的に雷が鳴り響く中、村の外れにある一軒の小屋から一人の男が出てきた。
その男、トーイはこの村の鍛冶屋であり、かつては広く旅をした冒険者だった。彼の手には、その日仕上げたばかりの光り輝く剣が握られていた。
剣は彼の長年の技術と勇気の象徴である。
「こんな夜に仕事を終えるとはな…」
トーイは自嘲気味に呟きながら、雨に打たれる。彼の重いブーツが泥にまみれながらも、確かな足取りで家路を急いでいた。
突然、遠くから微かな泣き声が風に乗ってトーイの耳に届いた。
「ん?これは…」
彼は足を止め、周囲を見渡した。雨と闇が視界を覆っている中、彼の鋭い目はやがて道端に転がる小さな布包みを見つけた。近づいてみると、その中からは赤ん坊の泣き声が聞こえていた。
トーイはためらいもせずに布包みを手に取り、中の赤ん坊をそっと抱き上げた。
「大丈夫か、小さな子よ。こんなところにどうして…?」
彼の厳しい顔には、突然の発見に対する驚きと、赤ん坊に対する深い同情が浮かんでいた。
赤ん坊を抱きしめながら、トーイは家への歩みを速めた。
彼の心の中では、この子をどうするか、すでに決断が固まりつつあった。
彼と妻のロロには娘がいるが結婚して一緒に暮らしていないため、この子が彼らの生活に新しい風をもたらすかもしれないと感じていた。
家に到着すると、トーイはドアを開けると同時に、中から心配そうに顔を覗かせるロロに向かって言った。「ロロ、驚くことがある。だが、怖がらないで聞いてほしい。」
ロロは夫の真剣な表情を見て、何か重大なことが起こったと感じ取った。
「どうしたの?トーイ、それは…?」
彼女の目がトーイが抱いている赤ん坊に留まった。
「この子を見つけたんだ。嵐の中を帰っていた際にな.........」
トーイは妻に事の次第を説明し、二人でこの赤ん坊を育てる決意を固めた。
その夜、リビングルームでトーイとロロはこの新しい家族のメンバーに「ロイ」という名前を与えた。
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