神に作られた戦闘兵器による配信生活〜対神用戦闘兵器として生み出された僕が、VTuberとして生きていくことになった件〜

刀剣 夜音

第1話 落ちる兵器


 約2000年前


「やっと出来た…目覚めよ"シンギュラリティ"!!」


 黒髪をオールバックにした強面の男性が、目の前に寝転がっている、同じく黒髪の絶世の美少女のような美少年のような存在に向けて、黄金色の神々しいオーラを放つ。


 そのオーラは目の前の存在の中にどんどん吸い込まれていき、黄金色のオーラが途切れると、目の前の存在がゆっくりと目を開く。


「対神用戦闘兵器。識別ネーム〖シンギュラリティ〗起動致しました」


 起き上がったシンギュラリティは、自身の創造主である強面の男性に頭を下げる。


「…生体情報オープン」


 強面の男性…全てを作り出す神"創造神ゼウス"は、コマンドコードである"生体情報オープン"を呟き、自身が作り上げた最高傑作の情報を確認する。




〖コードネーム〗《シンギュラリティ》


〖才能〗《全能》


〖状態〗《無感情》


〖詳細〗《神によって作られた神を含める全ての生命体を超える存在。

 この宇宙に存在する物事全てに即時に対応し、最高の結果を残す全能の力を持つ。

 暴走を起こす神を処分する為の道具とする為、意図的に感情を取り除かれた戦闘兵器》



「…予想以上の出来だ!」


 目の前に現れた情報を確認したゼウスは、想像していた結果を超える最高傑作に笑みを浮かべながら、シンギュラリティに戦闘知識や処分対象になるラインを教え、シンギュラリティを生み出してから1年足らずで、シンギュラリティに神を処分する仕事を任せる事となった。



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 1500年前


「…神としての仕事を放棄し、あろうことか神の持つ機密情報を下界にバラそうなどと……

 神罰への違反を確認。個体名下級神アマドを、シンギュラリティが断罪します」


 シンギュラリティがそう言うと、紫色の鎌を無から作り出し、その鎌で目の前の神の首を切り落とし処分を下す。


「お疲れ様…やっぱりこれじゃダメよね」


 破壊神ヘラと呼ばれる女神が突然シンギュラリティの目の前に現れ、シンギュラリティを強制的にスリープ状態にする。


「開発者権限を行使、識別コード破壊神……開発者権限の承諾を確認。

 識別コードシンギュラリティへの、感情の種と生殖機能の追加を要請……承諾を確認」


 ヘラがシンギュラリティに黒色のオーラを送ると、シンギュラリティの心に感情に変わる種が植え付けられ、体内の構造が、子供を作れるように変わる。


「…これが私に出来る償いよ」


 ヘラはそう言って、シンギュラリティをスリープから起こし、姿を消した



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 現在


「…あ〜ダリィ。地球とかいう下界はいいなぁ。ゲームとか、アニメとか娯楽が多くてよぉ〜。

 しかもニートとかいう働かなくても生きてる奴が居るんだろ?俺もなりてぇ〜」


 紫色のボサついた髪の神、怠惰の神ロキは、配下に作らせた柔らかなソファに寝転がり、下界の菓子を参考に作ったフライドポテトを食べながら、下界の娯楽を楽しみつつ、与えられた仕事である、シンギュラリティの管理をしていた。


「あ〜、ただの兵器の監視だし暇なんだよな〜。

 それにしても、こんなガキが俺ら神を滅ぼせるのか?」


 シンギュラリティの神をも超える美貌を見ながら、その綺麗な彼のおでこにデコピンをする。


「…あっ」


 スリープ状態となり無気力となっていたシンギュラリティに、思い切りデコピンした為、シンギュラリティは吹き飛び、彼らが過ごす神界にとっての地面である雲を切り裂きながら、下界である地球に落ちていった。


「…あちゃ〜やっちった。

 …不貞寝しよ」


 一瞬頭を抱えたロキだったが、やってしまったことを悔やむのを面倒くさがり、不貞寝という名目で2度目をする事に決め、配下に作らせたベッドに寝転がる。


 落ちていったシンギュラリティの行方を気にもせず…




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 神界から落ちたシンギュラリティは、高速で落下し日本という国にある東京という都市に落ちた。


 落下地点に草木があった為、来ていた装備が下だけを残し跡形もなく壊れ、上裸の状態で草の上に落ちる事となった。


 あまりの衝撃でスリープ状態から目覚めたシンギュラリティは、周りの状況を確認し、素早く自身が下界に落ちた事に気づく。


「…僕はもう必要ないのでしょうか」


 そんな呟きをして、無表情のまま起き上がり、近くに見える街に向かって歩きだす。



 街に付くと、周りの人から向けられる視線に疑問を浮かべる。


(…父や母、ゼウス様とヘラ様によって僕は人間や神と全く同じ姿のはずですが、おかしいのでしょうか?)


 自身の体を近くにあるガラス張りの建物で、確認する。


「ねぇ!君、芸能界に興味無いかい?」


 クルクル回りながら、全身を確認していたシンギュラリティに、1人の女性が話しかけてきた。


「私は芸能事務所の社長をやってる"九条 遥"だ」


 遥という女性は、『よろしく』と言いながら、シンギュラリティの手を握る。


「君は?」


 遥にそう尋ねられたシンギュラリティは、嘘をつくべきか考えるが、命令を下す神が不在であり、落ちた影響か、自身への命令権が消失していることを理解し、悪意が見えない彼女を信用することにして、嘘をつかずに答えることにした。


「僕はシンギュラリティ。神を滅ぼす為に作られた戦闘兵器です」


 そんなシンギュラリティの話を聞いた遥は、驚いた表情をするが、すぐに元に戻して、尋ねてきた。


「…外で話すのは良くなさそうだね。ちょうど良かった、君を私の事務所に連れて行きたかった所だったんだ」


 遥はそういうと、シンギュラリティを引っ張って、引きずるように彼女の事務所という場所へ連れていくのだった。

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