第11話 金策
俺は早速、金策に最適な魔物の元へ向かう――――
のではなくてうすさびれた墓地を訪れていた。
日は沈みかかっており、これからここは魔物の時間となる。
ギギギギギギ……
どこからか不気味な音が鳴り出す。
すると地面に散乱していた骨が合体してスケルトンが構成させる。
あっという間もなく武器を手にしたスケルトンに囲まれた。
このスケルトンから目当てのスキルを所持しているスケルトンを探して、そのスキルをコピーするのだ。
俺はまず剣を振るってスケルトンの包囲を抜けようとするが――
「おらぁ!」
ガキィーーーン!
剣と剣が弾き合う音が墓地に響く。
スケルトンによって剣撃は弾かれた。
その隙にほかスケルトンに背後から攻撃を受けそうになって躱す。
「うぉっ、危ねっ!」
ジリジリとスケルトンは包囲を縮めて来ている。
このままではまずい。
今回の戦闘では理由があって幻影迷彩は使えない。
『浮遊(小効果)!』
スキル風操作の浮遊によって一足でスケルトンの頭上を超えて、包囲を抜ける。
包囲を抜ければこちらのものだ。
『風刃! 風刃! 風刃!』
残り一体になるまでスケルトンを減らした。
後はスケルトンからの攻撃を防ぐだけだ。
ガキィ!
ガキィ!
何度かスケルトンから攻撃を受けるが剣で防ぐ。
その時――突如として体の自由が奪われ、動けなくなる。
よし!
俺はすぐさま幻影迷彩を発動する。
「……!?」
スケルトンは俺の姿が見えなくなって固まる。
時間にすると2〜3秒くらいだったが体の自由が戻り、俺はスケルトンを剣で横薙ぎして倒す。
スケルトンが粒子となって消え去る時にシステムアナウンスがされた。
【スケルトンからスキルポイント10を使用して、影踏みを取得できます。取得しますか? Yes or No】
迷わずYesを選ぶ。
一部のスキルにはコピーをするための条件があり、今回の場合は、実際にそのスキルをかけられる必要があるという条件だった。
その為、最初から幻影迷彩を使えば無双できたところをそうしなかったという訳だ。
よし!
目当てのスキルを所得できたので、帰還することにしよう。
この辺りか。
俺は日を改めて、今度こそ金策の為の魔物を狩りにきた。
『幻影迷彩!』
スキルによって姿を隠す。
しばらく待つと、ふわふわとした小さな姿が草むらから現れた。
目の前に現れたのは、まるで綿菓子のような体を持つ小さなウサギ、シュガー・バニーだ。
その体はピンク色で、耳にはパステルカラーのリボンが結ばれており、まるでおもちゃのように可愛らしい。
ふさふさの尻尾が軽く揺れるたびに、周囲にはほんのりと甘い香りが漂う。
だが、その愛らしい姿とは裏腹に、シュガー・バニーは非常に素早く、捉えるのが難しい魔物として知られている。
「そこにいたか……!」
俺は幻影迷彩で姿を隠したまま、慎重に近づく。
そして――
『精密風刃!!』
物理攻撃無効の特性を持つシュガー・バニーにスキルによる攻撃を加える。
「キュゥウーーー!?」
すぐさまシュガー・バニーは逃げ出そうとするが、影踏みでその動きを止める。
そして更に――
『精密風刃!!』
シュガー・バニーは粒子となって消えると同時に、魔石と小袋を落とした。
シュガー・バニーは精密風刃を2回直撃させると確定で倒せるが、初撃を運良く入れられたとしてもその次の攻撃を回避されて逃げられしまうのがほとんどだった。
そこで影踏みで動きを制限することで精密風刃の2撃目を直撃させて、確実に倒すことができる。
幻影迷彩、精密風刃、影踏みのコンボで、これも検証スレでできたら夢のコンボ技とされていたギミックなのだ。
俺はその小袋から目当ての
これは白色の宝砂と呼ばれるほどの高値で取引されているものだ。
というのも、際立って美味なだけでなく疲労回復に加えて美容効果も認められていて、貴族令嬢から熱狂的な人気があるらしい。
「たったこれだけで金貨50枚分で取引されるんだもんな。世の中、狂ってるよ……」
その後も同じギミックでシュガー・バニーを何匹も狩っていった。
ある程度狩れたので、袋に放り込んでいた
「10、20……21個……ってことは1億500万分ってことか……ひゃあーー!」
下手したら人一人の生涯年収くらいのお金が、この何の変哲もない袋に入っているということになる。
そう考えると恐ろしいな。
とりあえず、この
普通に道具屋などに売ることはできるだろうが、一気に素人が市場に売りに出したら、色々と面倒に巻き込まれる可能がある。
なので、屋敷に出入りしている商人に色をつけた手数料込みで売っぱらってしまおうと思う。
そうすると、手数料などを加味すると売値は1億はきるな。
それでも装備を購入してもしばらくは余裕ができる。
お金に余裕ができるとあんなものやこんなものと色々と夢が広がる。
今は実家住まいだけどそのうち独り立ちした後に、自分の家とかも買ってみたいしね。
「とりあえずはお祝いで何かいいものでも食べるか……」
ふふん。俺は鼻歌を口ずさみながら、何を食べるか考えながら帰路についた。
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