恋文


 今、キミは何をしていますか?

 ボクは今、キミのことを考えています

 

 遠いところに居るキミが愛おしくて……切なくて

 あの時ボクに見せてくれた笑顔が忘れられません


 小さい頃から時々逢っては一緒に野原を駆け回って

 遊び疲れたら木陰で二人、並んで昼寝したよね

 キミがいきなり木に登り始めた時はボク、心配したよ

 でもその時、キミは楽しそうに笑ったんだ

 その笑顔は今でも忘れられないです

 


 今、キミは何をしていますか?

 ボクは今、未来のことを考えています


 キミがもし、ボクに心を許してくれた時

 どんな幸せな生活を送れるのかと想像しています


 小さい頃に二人で結婚の約束をしたよね

 その時は結婚の重みなんて少しも知らなかったけど

 大人になった今のボクには大変だって分かるよ

 でもキミとなら絶対に楽しいって、そう思うんだ



 今、キミは何をしていますか?

 ボクは今、過去のことを考えています


 キミと逢うことが出来ない今

 ボクがすくう事の出来なかったあの日を呪っています


 小さい頃は二人で神に祈っていたよね

 キミが敬虔に神に祈るものだからボクも祈ってた

 でもね?神なんてもの存在しなかったよ

 死んだら神の元に逝けるのだとキミは言っていたけど

 遺されたボクにとっては神にキミを奪われたんだよ

 ボクからキミを奪う神なんて要らない



 今、キミは何をしていますか?

 ボクは今、手紙を書いています


 キミのことを想いながら

 ボクの大切な家族たちに遺したい言葉を綴っています


 ボクを育ててくれた親にも

 ボクと一緒に成長してくれた兄弟にも

 向ける顔もなければ、贈る言葉もないけれど

 ありがとうって伝えたいから



 今、キミは何をしていますか?

 ボクは今、戦に身を投じています


 キミを殺したヤツら地獄に送りたくて

 色んなヤツらを剣で斬り殺しています


 剣で肉を斬った時の感触

 斬られたヤツらの断末魔

 血を浴びて赤く染る視界

 そのどれもが新鮮で

 とてもじゃないが経験したくなかった



 今、キミは何をしていますか?

 ボクは今、無様に突っ伏しています


 キミに手向けを送りたくて

 色んなヤツらを殺していたら背後から斬られました


 薄れゆく意識の中でキミのことを想っています

 ボクは神のことは信じていないけれど

 キミの言葉は信じているから

 キミと国の為に手柄を立てたボクはキミに逢えますか?

 逢えたら良いなぁ……

 


 今、キミは何をしていますか?

 ボクはキミに逢って、微笑んで欲しいです


「愛しています」

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