第1話-4
岩が揺れているのか、街全体が揺れているのか、カイトが確かめるように街と座っている岩を交互に見ている。
「キャ」
ランがバランスを崩した。
ゴゴ、ゴゴ、ゴゴゴー。音が大きくなる。岩が動ている!?岩が盛り上がる。ランが岩から転げ落ちた。
「ラン!」
カイトが飛び降りてランに駆け寄る。オレはバランスを取って岩の上に残った。岩が立ち上がった。小さな岩がいくつか繋がり手と足を形成している。これは「ウォーロック」だ。その名前の通り、戦う岩。魔物図解にも書いてあった。岩の固い防御力と小さな岩が複数連なった手をムチのようにしならせる強力な攻撃力も持ち合わせている。ウォーロックの手が持ち上がり、円を描くようにオレを狙ってきた。オレは咄嗟にウォーロックから飛び降りた。ランとカイトの元へ走る。
「大丈夫か?逃げよう」
「ランが足を怪我してて走れない。僕がかかえて走るよ」
「大丈夫か?頼む。行くぞ」
走る体制になってチラッと後ろを見た。大きな図体なのに早い。思ったよりも近い位置にいた。グウォーン。岩の手が大きな風切り音をたて伸びてくる。まずい。ランとカイトにも届きそうだ。やるしかない。受け止めてやる。両手で剣を支え迎え撃つ。
バキッ。ドゴォン!
剣が折れ、思いっきり腹に食らい、吹っ飛ばされてしまった。アバラが痛む……。でもオレを狙ったおかげで、ランとカイトは無事だ。しかしまだピンチであることには変わりない。ランとカイトを狙われるとまずい。注意を引くんだ。痛むアバラを押さえて走ってウォーロックの後ろに回った。
「おい!こっち、だ……嘘だろ!?」
後ろにも、顔が、顔がある!魔物図解にこんなこと書いてなかったぞ。目がジロリとこちらを見た。両腕が上がり片方がオレを、片方がランとカイトを狙っている。弱点はあの足の節だ。あそこを剣で切ることができればウォーロックは動けなくなるはずだ。折れた剣を見つめる。一か八かこれで切り付けてみるか。その時だった。
「これを使え!」
どこからか男の声が聞こえ、目の前に銀に輝く細見の剣が突き刺さった。声の主が気になるが、今はそれどころではない。ウォーロックの腕が振り下ろされる。剣に向かって全力で走り剣を抜き、そのままの勢いで足の節を切りつける。。
シャーン。ガリガリガリーーー。剣を振る音と岩が削れる音が響く。と、同時に。ズドーン。と爆発音も響いた。カイトがウォーロックの腕に向けて火を放っていた。岩と岩の間の節に当たり、腕が地面へと落ちた。足が切れたウォーロックの体が大きく傾いた。ズッズゥン。砂煙を巻き上げ巨体が倒れた。残った片手で立とうとするが片足では立てないようだ。
「額に見える、黄色の宝石を剣で取り除け」
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