手紙
姉からの手紙は、いつも思いがけないところから姿を現す。前回は、読みかけの本の間に挟まっていた。さらにその前は、窓の外側にペタリと貼り付いているのが見つかった。
手紙の内容は、いつでも旅の進捗だ。
旅が仕事でもあり、趣味でもあり、人生そのものでもある姉は、唯一の肉親である妹へ宛てた手紙の九割を旅先での経験に費やす。
ドラゴンの鱗の生食、空飛ぶ街での逃避行、墓場の幽霊たちと酒盛りをしたことなどが、面白おかしく描かれている。さすが、旅行記作者として活躍しているだけはある。
ただ、手紙の配達の仕方だけは、どうにも感心しない。切手や封筒の代金を浮かせるためなのだろうけれど、姉は手紙に仮初の命を与えて、文字通り私の家まで旅をさせる。
だから、時にシワシワになっていたり、雨に濡れていたりする。いつか注意してやろうと思うのだが、姉の居所はいつも変わるので、いまだに小言を伝えることはできていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます