第3話魔界に天界
魔王の話通りならば、私が現れたことで隠居生活が出来なくて困ってるみたいだ。
正直どうでもいいが、魔王は薄毛の頭頂部を見せてまで懇願したんだ。
慈愛深い私はそこまで鬼ではない。
魔王にはあの世で隠居生活を送って貰おう。
「さて、言い分は以上か?」
「ま、まだ大事な話がありまする!」
「早く言え」
「へ、へい! ワシはそもそも魔界から派遣された魔王な訳で……ワシや後継者を倒しても、数百年後には新たな魔王が派遣される仕様なんですよ」
魔界が何かは知らんが、派遣された身ならば話が変わるな。
派遣され続ける魔王なんぞ、かなり面倒くさいこと、この上ない。
よし、こうなったら魔王に魔界の場所を吐かせて、根っこごと滅ぼすか。
「それで、魔界はどこにある」
「そこらへんは守秘義務ですので、すみません」
「チッ」
使えんハゲだ。
私の苛立ちも限界に近いぞ。
「しかしですね? ワシは争い事が嫌いなんですよ。で、もし次なる派遣魔王が来たら、本格的に人類侵略するかもなんですよ!」
「貴様、ふざけたことを抜かしているな。既に3000年前から侵略しているだろ」
「ち、違うんです! 大きな誤解があるんですって!」
薄毛の話だと、3000年前から魔の者達へ、争い禁止令を出し、今の今まで一度も人類に危害を加えていないと。
「では、なんだ。人類への侵略は貴様らの仕業でないというのか」
「そうなんです! 恐らくですが、天敵である天界の連中がワシらを貶めるのに、魔の者と偽って人類に危害を加えたのかもしれません」
魔界だの天界だの、ふわふわした中身の話ばかりだな。
私に慈愛がなければ、ハゲ河童の頭を握り潰しているぞ。
だが、問題はそこじゃない。
「薄ら魔王。貴様の言葉通りならば、魔の者達の存在意義は何になる」
「えっと……無害な生き物じゃないですか?」
「は?」
「ひぃ!?」
今すぐにでも、ふざけた脳みそをシェイクしたい。
つまりなんだ、魔の者達は自然景色としてでもお楽しみ下さい、てか?
妄言を放つにも限度があるぞ。
やはり人類の為に、魔の者達は根絶やすしかないみたいだ。
「安心しろ魔王」
「へ?」
「私の粋な計らいで、魔の者達はなかったことにする。なーに、痛みもない内に終わらせる」
「なにその、この世の邪悪を集めたみたいな球は!?」
薄毛は再度、見たくもない頭頂部を見せ土下座をした。
そこまでして隠居生活に淡い期待を抱く精神は、ある意味賞賛に値する。
根絶やしは話を聞き終えてからにするか。
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