煌々と傷。
流川縷瑠
プロローグ
きっと、物事は全て重なっていて、誰かの行動がどこかで間接的に誰かの行動につながっているんだよ。
何の話かと聞くと、その人はしーっと唇に指を当てる。
慌てて口を閉じ、黙って話を聞く姿勢に入る。
するとその人はまた話を続ける。
何が他人に影響を及ぼすのか。大きな行動をすれば影響が出るわけではないし、“どんな”行動がっていうのは実は定かではない。
例えば私が道に咲くシロツメグサを摘んだという行動をするだけで、影響を受け花を摘む者育てる者が出てくる可能性はある。
無数にいるニンゲンの一人の小さな行動に人は振り回されているのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
繋がりに見えて、運良く交わっているように見えるだけなのかもしれない。
つまるところ何が言いたいのですか?
ついまた口を開いてしまった。
慌ててまた口を閉じるのをみてその人は少し微笑む。
その人の笑顔は人の目を惹きつける。
笑顔という形をしただけの笑顔。
その笑顔は何を意味するのか、模倣しただけの笑顔を浮かべるこの人は一体何を思っているのか。
小さな自分には何もわからなかった。
大きな手のひらが優しく頭を撫でる。
顔を上げるとその人はどこか遠くをあるいは近い未来をみるような目でまた語る。
きっとこれも誰かから始まった、または自分から始めた始まりがある物語なんだろう。
だがきっとその始まりはきっと誰の耳にも入らないだろうね。
少し目を細め、こちらを見る。
何故?
声には出ていなかったが顔に出ていたのだろう。
その話は、ドブのような濁り切った色をしているから
と答える。
それでも人の繋がりやら物語について語っているのは、まだ、誰かと繋がっていたい又は知ってほしいと思っているからなのではないか。
口に出す前に、その人はこちらに近づきそっと額を撫でる。
さぁ、お行き。
優しく撫でるその手は眠りへと誘う。
眠気に身を委ねゆっくりと目を閉じて、次に目を開ける時にはそんな記憶はなくなっていた。
「君にしかお願いできない。信頼しているよ。」
聞き覚えのある声が頭に響く。
深々とその場で頭を下げ、歩き出す。
ただその声に従って。
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