第406話 修行のお話



 前回と同じくパン粥を頂いて、お腹が膨れたところで今後の話が始まった。


「前回話したと思うが、俺の種族は魔人族といってな、平均寿命が150~200歳くらいと長命種なんだ。俺は結構魔力も多いから長生きの方ではあるが180歳を超えてかなりガタが来ててな、そう先は長くないと思うんだ」

「チャーキ!」


 何でもないようにチアキさんが話すから頷いてしまったけど、白雪さんが悲壮な顔でチアキさんの袖を掴んでいる。白雪さんの手に自分の手を重ねて微笑む様は、きっとこれまでにも話をしたことがあったのだろうと伺える。聖獣の白雪さんはまだまだ生きることは確定で、例えチアキさんが200歳まで生きたとしても、確実に看取ることになるだろうから。


「それでな、折角の日本人の記憶持ちと出会ったんだ。これも運命だと思ってな、俺が持つ全てをヴィオに教えようと思ってるんだ」

「えっ!? それって」


 勇者直伝で教えてもらうとか凄すぎません? それってお幾ら万円お支払いしたらよろしいんですか?


「まあ俺が教えることができるとしたら、魔法、魔道具、武術、剣術……に関してはまだ使えそうにないよな。まあそんな感じだ。ヴィオがやりたい事から教えるぞ」

「それは凄く嬉しいし、全部やりたいけど、そんなに色々教えてもらって対価はどうしたらいいんですか? 私……ああ、不労所得はあるからお金は多少持ってるけど、こっちにもギルドはありますか?」


 そういえばカルタとハンモック風呂の不労所得が結構入ってたから、ギルドさえあれば引き落としは出来るからね。


「ははっ、俺が教えたいという事に対価はいらんよ。恩人でもあるしな。いや、そうだな。そう言われても日本人だった記憶があるなら無償の施しには遠慮が勝つよな?

 だとしたらこうしよう、ヴィオは米を食ったことがあると言ってただろう? 俺にも食わせてくれんか? 料理はうちのミケが作れるからな、釜は作ってないが作ることは直ぐに出来る。それが対価でどうだ?」


 米に関しては私も食べたいから問題ない。マジックバッグがあれば中身も入ったままだし、炊飯器は……ああ置いてきたね。でも魔道具を作れるなら再現は可能だ。


「炊飯器を作ったのか? それはいいな! どんな風に作ったのか分かれば直ぐに作れるぞ! よし、じゃあ行くか!」

「チャーキ、少し待て」

「チャーキ様、流石にまだヴィオ様は病み上がりですから……」


 興奮したチアキさんが立ち上がったところで、静かにしていた白雪さんとルイスさんに止められた。ふふっ、日本人に米を我慢するなんて難しいよね。

 何ならこの一週間、私が起きるまで我慢してたんだろうし、魔道具を作るだけなら体力も不要だし大丈夫だと告げれば、チアキさんが非常に嬉しそうに笑ってくれた。


 ルイスさんに運ばれることにはなるので申し訳ないんだけど、それに関しては気にしないでくれと言われたので甘えさせていただきます。



「さて、どんな炊飯器を使っていたんだ?」


 到着した部屋は実験室なのか、結構広いお部屋だった。壁際には作り付けの棚で埋まっていて窓はない。小さな棚には素材が綺麗に収納されていて、母さんの調合室との違いに驚く。

 母さんの調合室は植物系の素材が吊るされて、素材は箱に詰め込まれたのが飛び出してたからなぁ。まあでもよくある実験室で足の踏み場がない状態という汚さはなかったけど、雑然としているって感じだったんだよね。

 この部屋は非常に整理整頓されていて、博物館というか……なんだろう生活感がない感じがするね。


「間違いでもないな。最近はめっきり使わなくなったし、ここは定期的にミケが手入れしてくれているから綺麗な状態を保ってくれているんだ。さて、久しぶりの魔道具作りだ、ワクワクするな!」


 日本人時代は趣味でプラモデルを作ったり、フィギュアを作ったり、モノづくりが趣味だったというチアキさん。お仕事もIT関係でHP作成から始まって、最後はスマホのアプリを作るような仕事をしていたんだって。ギルドシステムなんてややこしいものを作り出せた理由に納得だよね。

 ルイスさんにマジックバッグを持ってきてもらい、試作品だった炊飯器を取り出す。三合炊きの炊飯器は自宅のキッチンで使っていたから、誘拐されたあの時には鞄に収納していなかった。

 錬成陣も練習しようと思ったところで荷物整理をし出したから鞄に入れてない。


「これが試作品で作った炊飯器です。一合炊きだから少ないんだけど、三合炊き、五合炊き、二十合炊きの三種類作ったんです。火力の問題で、ココとココに魔法陣を刻んだんです」

「ほうほう、成程な。というか、ヴィオはその年齢で魔道具作りも勉強してたのか? チートを地で行ってるなぁ」


 最強チートの人が何言ってるんでしょうかね。私のは周りがチート持ちばっかりだったから教えてもらって知識をつけただけの普通の人ですよ。

 元々魔道具作りをやっていた人である、直ぐに理解したチアキさんはサラサラと魔法陣を書いていく。そういえばこの部屋に入ってから白雪さんがいないね。


「ああ、白雪は魔道具作りなんかの細かい作業が嫌いなんだよ。だから魔道具作りの時は自分の時間を過ごしている筈だぞ。そうだ、ルイスも久しぶりにやってみるか? 最近は俺がやってなかったから教えることもなかったもんな」

「良いのですか? ありがとうございます、では」


 扉の内側でジッと直立不動だったルイスさんは、チアキさんの言葉を受けて嬉しそうにテーブルに近付いてきた。

 おぉ、ルイスさんは魔道具作りがお好きという事なのですね。私の移動を手伝う為だけに待っていてくれたのかと恐縮していたけど、それだけじゃなかったみたいで良かったです。


 ルイスさんの書く魔法陣を手直ししながら、いつの間にか部屋に来ていたミケさんに炊飯窯の設計図を渡している。魔法陣を書く作業は三人共久しぶりという事で、綺麗な図形を描くのに結構時間がかかったものの、形にはなった。あとは炊飯窯が出来上がってから錬成すれば完成だ。


 立作業での魔法陣を書く作業に結構疲れてしまい、作業が終わった後は居間でまた休憩。夕食はパン粥ではなかったけど、まだ柔らかい食事だった。

 少しずつ通常食に戻すのと同時に、体力の回復に努めるようにと言ってもらった。

 何から何までお世話になりっぱなしですみません、ありがとうございます。


  

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