第372話 お母さんのお友達 後半
「俺たちがドゥーア先生と知り合った理由は、ヴィオを探しに来たからだ。依頼主はフィル、ヴィオの父ちゃんだな」
「お父さん? 生きてたの?」
小さい時に別れたきりで、話も聞かないから死んでるだろうと思ってました。けど、そうか、2人で行動出来たレベルの冒険者だもの、早々簡単には死なないよね。冒険者だなんて思ってなかったからそう思ってたけど、軌道修正しなきゃですよ。
「生きてる。ただフィルは自由に動けなくてな、本当はヴィオの事を自分で探しに行きたかったんだけど、そうはできない事情があって、それで昔馴染みの俺たちに依頼が来たんだ」
私の中ではいないことになっていた遺伝子上のお父さんは、どうやら私の事を認知しており、心配もしてくれていたらしい。
「フィルの為に言い訳させてもらうと、フィルはアイリスとヴィオがヘイジョーの町を出ているとは思ってなかったし、自分が離れる代わりに護衛が付いていると思ってたんだ。それが、あのクソ眼鏡のせいで……」
ダンっとテーブルを叩いたテリューさんは、何かを思い出しているのか悔し気に言葉を飲み込んだ。クソ眼鏡……。
「国を出ろって言いに来た人かな?」
記憶を探れば眼鏡の銀髪が思い出される。確かあの男が来た日に、住み慣れた家を出て森の中を歩き回り、あの忌まわしい子爵領に行くことになったのだ。
「ヴィオ、覚えているの?」
「ん~、流石にあんまり覚えてないけど、昔住んでた家に銀髪の眼鏡が来たのは覚えてるよ。追放とか、処刑とかそんな事を言ってた気がする」
隣からヒンヤリした空気が流れた気がしてお父さんを見上げれば、ヨシヨシと頭を撫でられる。気のせいだったようだ。
「アイリスは、十年したらメネクセスに戻ってくる予定だった。
多分ヴィオの聖属性の事を考えれば洗礼式までには皇国を離れるつもりだったと思うんだが、その前に殺された。
アイリスの行方は追い出した張本人のクソ眼鏡も追っててな、それでアイリスが殺された事が分かったんだ」
追い出しておいて追いかけるとか、意味が分からんのだが? クソ眼鏡は何がしたかったんだ?
「アイリスの事を知ったフィルは、その時に初めて2人がヘイジョーにいない事を知ったの。それでヴィオはどうしているのか、眼鏡は役に立たないから私たちに依頼を出したの。
私たちもその時に初めてアイリスの行方を知って、最後の足取りを聞いて皇国に向かったわ。ヴィオが捨てられたロッサ村は、私の実家がある領地でね、あの川がリズモーニに繋がっていることを知っていたから生存の可能性にかけてサマニア村に行ったのよ」
どうやら私のマジックバッグを狙っていた奴が、私の遺骸を探しに来たのに消えていた事を知り、川に落ちたのだろうと土竜の皆に伝えたらしい。良い人じゃんと思ったんだけど、どうやらそいつはお母さんの暗殺犯の一人だったらしくって、拷問してその発言を聞きだしたと聞いて何とも言えなくなったよね。
「サマニア村ではみんな口が堅くてな、丁度ギルマス会議でギルマスたちも不在だったから、ヘイジョーとの連絡も取ってもらえねえ。そんな事もあって諦めかけてた時に、それらしき娘が王都に出かけてるって聞いたんだ」
まさかあの時期に来てたの? ギルマス会議の頃って、まさに王都から戻る時ぐらいじゃんね。凄いニアミスというか、すれ違いだったんだね。
「私たちが村を出た後、置手紙を見てくれたアスラン様がヘイジョーに連絡をしてくれて、ドゥーア先生に連絡をしてくれたの。内容を見て、多分ヴィオの事で間違いないだろうって確信したんだと思う。
それで私たちが王都に到着した時に先生と再会して、ヴィオたちがまたこっちに来ると聞いて待っていたの」
どうやらウミユのダンジョンに来たのは偶然ではなく、私の生存確認をしたいと希望していた土竜の皆と会わせるために選ばれていたらしい。
「お父さん達も知ってたの? お兄ちゃんたちも?」
「うん、俺たちはゲルシイの時に聞いた」
「儂は 村に帰った翌日じゃな、〔土竜の盾〕という奴らがどういう奴らか見定めたいというのもあってヴィオには言わんかった、すまんかった」
お父さんが謝ってくるけど、何で謝るの?
どうやらウミユのダンジョンを一緒に潜るようにしたのは、ドゥーア先生の計らいだったらしい。長期間一緒に過ごせばお互いの事もわかるだろうからと。
確かにあれだけ一緒にいた事で、この人たちが良い人だという事も分かるし、情に厚い人だという事も分かった。そして今の話を聞けば両親と仲が良かったんだろうし、産まれた時から知っている私を心配して探していた事もわかる。
だけど、お父さんが謝る意味が分からない。
「だって〔土竜の盾〕に出された依頼は『私を探してほしい』って事でしょ? つまりは生存確認と所在地の確認だよね? 連れて帰って来いって事じゃないでしょう?
だったら〔土竜の盾〕の皆の依頼はこれで終了じゃない? 私が元気な事も分かったし、あちこち旅はしているけど、サマニア村に所属していることも分かった。それでいいよね?
私、お父さんと離れないと駄目なの?
フィルさんがお父さんって言われても、私にとっては知らない人だよ? その人のところに行かなきゃダメなの?」
もしかして最近時々聞かれてたお父さん問題はこれのフラグだった?
フィルさんが動けない状況ってどういうこと? どこかに捕まってるとか? だとしたら余計に行く理由がないよね?
「ヴィオ、泣かんでくれ。行きたくないなら行かんでええ。
ほんまもんの父親が分かったらそっちがええと言うかもしれんと思ったから、ヴィオの意見を聞くつもりじゃが、儂はヴィオの事を自分の娘じゃと思っとる。もしそっちに行ったとしてもそれは変わらん。
じゃが、許されるなら一緒に金ランクになりたいと思っとるし、まだまだ伝えてやりたい事もある」
「
抱き上げられた私の止まらない涙が、お父さんのシャツを濃いピンクに染めていく。ギューと抱きしめてくれる腕はいつものお父さんの腕で、温かさとお父さんの心音に荒ぶった心が落ち着いてくる。しばらくそうしてトントンされているうちに、ようやく涙と鼻水も止まった。
そっと【クリーン】でシャツを綺麗にしておきます。
「ヴィオ、俺たちも悩んでたんだ。
けど、サマニア村を見て、先生たちから話を聞いて、実際にアルクさん達と話して、ヴィオとダンジョンで過ごしただろ? それを見てたら今が楽しいのはよく分かったんだ。
アルクさんから無理に引き離そうとは思ってねえし、ヴィオが言ったように、俺たちはヴィオの生存確認が第一の目的だったからな。
フィルも会いたがるだろうけど、今は危険だと思うから、安全なアルクさんの近くにいるほうが安心すると思う。
ただ、あいつはアイリスとヴィオの事を愛しているし、ずっと会いたいと熱望していたという事は覚えてやっててほしい。あいつの希望でお前たちと離れた訳じゃなかった事だけは覚えてやっててくれないか?」
真剣な表情でお願いされ、私をメネクセスに連れて行く気はないのだという事は分かった。フィルさんも、ただ出奔した訳でなかったのは理解した。気持ちもまあ覚えておこう。
「それにしても心配してるけど呼ぶのは危険って、どんな戦場にいる人なの? 特級ダンジョンに挑戦中とか?」
悪いことをして捕まっているという訳ではなさそうだけど、金ランクとかなら貴族からの指名依頼を断れないらしいし、そんな感じで捕まってるのかもしれないよね。
「あ~~~~~」
テリューさんが言い淀むなか、他のメンバーも口をつぐむ。守秘義務とかなら聞かないよ?
「ヴィオ嬢、ヴィオ嬢のお父上であるフィルさんの正式なお名前は、ファイルヒェン・ドライ・メネクセス、現在はファイルヒェン・カイン・メネクセスですね。名前でも分かると思いますが、メネクセス王国の現国王陛下ですよ」
……は?
…………はぁ??
………………はぁぁぁぁ???
ドゥーア先生からの衝撃発言に声が出ないんですけど!?
え? コクオウヘイカって国王陛下? 王様のこと?
なんで王様が冒険者やってんの? いや、メネクセスの王様は元冒険者だって言ってたな。
ってどこの勇者だよ! んでもってお母さんは冒険者の聖女でしょ?
聖女と勇者って神国の伝説かっつーの!
いやいや、盛り過ぎ、属性多すぎ、どんだけ物語の主人公ネタぶち込んでんの!? いやいや、情報が多すぎてもう無理……。
あまりの衝撃にさすがの私もキャパオーバー。
お父さんとトンガお兄ちゃんの焦った声が聞こえたけど、そのまま意識を手放した。
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