ヒロインは始まる前に退場していました
サクラ マチコ
プロローグ
第1話 最悪の目覚め
うすらぼんやりした寝起き独特のまどろみを楽しむ中感じたのは、いつもの暖かい布団に包まれる幸福感ではなく……。
「くさっっ!!!」
ごみ収集所の臭いだった。
「は????」
起きたら知らない天井だったってのはよく小説なんかでもあるけれど、見渡す限り空だ。
「え? 昨日飲みすぎた? そのまま外で寝た? 全然覚えてないんだけど……」
元々そんなにお酒が強い記憶はなく、今までに外で飲みつぶれるなんてした事はないはずだが、酒に酔いつぶれた人は記憶が曖昧というし、そんなに飲んだのだろうか?
臭いと思ったのもそのはず、自身が寝ていたところはごみ収集所らしき場所。
『らしき』というのはよく見る電柱のところでネットがかかってて。というのではなく、様々なものがそのまま捨てられて山になっているからだ。
『大きなビニール袋が大量に』でもなく、むき出しで捨てられている状況なんて見たことがない。
そんな場所で寝ていたわけだから自身にも色々付着している訳で……。
頭が痛いのはぶつけたわけではなく、この臭いのせいなのかもしれない。
ここで自分の身体を見てみると白っぽいワンピース一枚で靴は履いておらずに裸足だ。
ズタ袋のようなペラペラの鞄なのか布切れを肩から斜めにかけてはいるけど、中身を確認せずとも何も入っていないのが分かるくらいペラペラだ。
「……どういう状況?」
改めて周りを見て、自分を見て状況を把握しようとするが、ますます混乱する。
「うん、こういう時はまず深呼吸して落ち着くべきだな。ふぅ……」
「すぅ~~~~。ぐほっ!臭っ‼」
忘れてた!
此処ゴミ捨て場だよ!
アホか自分‼
ひとまず場所を移動して考えようと起き上がると、頭と背中がとても痛い。
ゴミ山から這い出してすぐ近くにあった川に飛び込んだ。
「ふぁ~。冬だったら死んでたね。まぁ、冬だったらゴミも臭くはなかったかもだけど」
ブツブツ独り言ちながら、身体に染み込んだかもしれないゴミの臭いをゴシゴシ手でこする。
擦りながら目を背けたい現実をひとまず置いておく。
「ってできるか~~~~ぃ!!!」
え!? なんで? 私ちっさくなってるんですけど?
黒尽くめの人に薬飲まされた? 小さいけど高校生探偵?
いや、もっと大人だった気がするけど。
いや、ちょっとまって、自分の事が殆ど思い出せないんだけど? けど、お酒あんまり飲めなかったとか思ってるってことはそれなりの大人だった筈で、確実にこんな小さい手足ではない。
しかもチラチラ見えるコレって髪の毛だよね? コスプレじゃないよね? ピンクなんですけど!?
ピンク髪って、乙女ゲームのヒロインか、悪役令嬢もののざまぁ転生者くらいしか思いつかないんですけど?
え? こういうの転生ってやつ?
ラノベではよく見るけど、私が知ってるのは『よく読んでた小説の世界に来ちゃった♡まさかのあの子に転生!?』か、神様がテヘペロしながらチートくれる物語しか知らないんですけど。
神様にも会ってなきゃ、ピンクのヒロインがゴミ捨て場で目覚める小説なんて知りませんけど!?
ってか死んだ覚えがないんですけど~~~~‼
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