第3話: 鉱山での試練
静寂が一瞬破られた。足元からわずかな振動が伝わってくる。俺は緊張感を持ってその場に立ち、耳を澄ませた。地面の震えは次第に強まっていく。そのリズムは規則的で、まるで巨大な何かがこの採掘場に向かって進んでいるかのようだ。
「ついに来たか…」
俺は剣を構え、呼吸を整えた。ミスティア鉱石を守る守護者、そしてこの山脈の頂に立つ者。それがミスティアドラゴンであることは疑いようがない。振動が近づくにつれて、周囲の空気がさらに重く、冷たくなっていく。魔力が大気を揺るがし、俺の肌に刺すような感覚を与えた。
やがて霧の向こうから、巨大な影がゆっくりと姿を現した。青白い光を放つ巨大な鱗、どっしりとした四肢、そして翼を広げるその姿は、まるで山そのものが動き出したかのような圧倒的な存在感だった。俺が見上げるほどに高くそびえるミスティアドラゴンが、ついにその全貌を現した。
「予想以上だな…」
一瞬の感嘆が胸をよぎる。だが、すぐにその感情は消え去り、戦闘態勢に入った。これまでにも多くの魔物と戦ってきたが、このドラゴンの圧倒的な存在感は、他の魔物とは一線を画していた。俺の目の前に立ちはだかる敵、それはまさにこのミスティア山脈の頂点に君臨する存在だった。
ミスティアドラゴンは大きく口を開き、低い唸り声を上げた。その音は、地の底から響いてくるような重低音で、俺の胸を震わせた。青白い瞳が俺を捉え、その視線には明確な敵意が込められていた。このドラゴンは、ただの魔物ではない。賢く、そしてこの鉱石を守るために生まれた存在なのだろう。
ドラゴンの巨大な爪がゆっくりと動き、地面を掻き分ける。その一動作だけで、地面が揺れ、足元の石が砕け散る。俺はその動きを冷静に見極めつつ、攻撃のタイミングを図った。
「まずは様子を見るか…」
ドラゴンの動きは巨大だが、鈍重ではない。もし俺が正面から突っ込めば、一撃で終わる可能性もある。俺はドラゴンの動きを観察し、次の一手を考えた。だが、そう悠長に構えている時間はなさそうだった。ミスティアドラゴンがその巨大な口を開き、まばゆい光を放つ魔力を溜め始めたのだ。
「魔法攻撃か…!」
ドラゴンの口から放たれる魔力は、雷のような閃光を伴っていた。その一撃が地面に叩きつけられた瞬間、閃光が辺りを焼き尽くし、爆発音が響いた。俺は瞬時に身を翻してその攻撃を避けたが、背後の岩場が一瞬にして砕け散り、崩れ落ちるのが見えた。直撃すれば、俺とて無傷では済まない。
「これは厄介だな…」
ミスティアドラゴンの魔力は、桁違いの破壊力を持っている。しかし、その攻撃には明確な隙があった。魔力を溜めるために、わずかに動作が遅れる。その瞬間を狙わなければ、勝ち目はない。俺は剣を構え直し、ドラゴンが次の攻撃を繰り出す前に、反撃の準備を整えた。
ドラゴンが再び口を開き、次の魔力の一撃を溜め始める。俺はその一瞬の隙を狙って、全力で突進した。剣に魔力を込め、力強く振り下ろす。剣が青白く輝き、魔力が剣から放たれ、ドラゴンの胸元に向かって一直線に飛んでいった。
「当たれ!」
俺の叫びと共に、剣から放たれた魔力斬撃がドラゴンに直撃した。巨大な鱗がはじけ飛び、ドラゴンの体が一瞬揺らぐ。だが、その攻撃は致命傷には至らなかった。ドラゴンは怒りの咆哮を上げ、俺に向かって鋭い爪を振り下ろしてきた。
「クソッ…!」
俺はその攻撃をギリギリでかわし、距離を取る。だが、ミスティアドラゴンの動きは次第に速くなっていった。俺の攻撃に反応し、体勢を立て直し始めたのだ。今度はドラゴンが自らの巨大な翼を広げ、一気に空中へと飛び上がった。
「空中戦か…」
ドラゴンは空中に舞い上がりながら、再び強力な魔法を溜めている。今度の攻撃は、これまで以上に強力なものになるだろう。だが、俺にはもう後がない。この瞬間を逃せば、次の攻撃で終わりかもしれない。
「やるしかない…」
俺は覚悟を決め、最後の一撃に全てを賭けた。剣に魔力を最大限に込め、ドラゴンが攻撃を放つ瞬間を狙う。そして、全力でその攻撃を跳ね返すための「魔力放出」の技を準備した。
「今だ!」
ドラゴンが口を開き、魔法を放つ一瞬前、俺は全ての力を込めて剣を振り下ろした。剣から放たれた魔力が空中に閃光となって走り、ドラゴンの胸部に直撃した。ドラゴンの攻撃はそのまま止まり、巨大な体が大きく揺れた。
「これで…終わりだ!」
俺はさらに追撃をかけるために剣を振り上げ、全力で突進した。ドラゴンの防御を突破するために、剣に最後の魔力を込め、弱点である胸部へと突き刺した。ミスティアドラゴンの咆哮が山中に響き渡り、その巨体がゆっくりと地面に倒れ込んだ。
俺は息を整えながら、目の前に倒れたドラゴンを見下ろした。激しい戦いだったが、俺はついにこの山脈の守護者を打ち倒したのだ。そして、その先には、目指していた青白く輝くミスティア鉱石が静かに光を放っていた。
「これで…手に入れられる」
俺はドラゴンの死骸を見下ろしながら、ついに手に入れた勝利の感覚を味わった。次なる試練を越えるための武具の強化は、この鉱石によって成されるだろう。
ーーーーーーーーーーー
本日5話更新(12:00、12:30、13:00、13:30、14:00)していきます。
【応援のお願い】
いつもありがとうございます!
☆をいただけると大変助かります。皆さんの応援が大きな力になりますので、ぜひよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます