第1章: 異世界への目覚め

第1話: 不可解な目覚め

意識の底から浮かび上がるように目を覚ました。45歳で癌に倒れた自分が、なぜ今こうして目を覚ましているのか、全く理解できなかった。目を開けた瞬間、感じたのは痛みでも倦怠感でもなく、むしろ異様なほどの身体の軽さだった。病気に苦しんでいた最後の記憶とはあまりにもかけ離れた感覚に、僕は生き返ったのか、あるいは夢を見ているのかと疑った。


「ここは…どこだ?」


声を出さずに自問自答しながら、僕は起き上がり、周囲を見回した。目の前には見知らぬ木造の天井が広がり、古びた家具が所狭しと並べられている。壁際には膨大な書物が並び、無数の本棚が部屋を埋め尽くしていた。その光景は、かつて僕が経験したどの場所とも異なる、異様な空気を漂わせていた。


最初に感じたのは、自分の身体に起きた変化だった。手のひらを見つめると、その肌の滑らかさに驚愕した。かつて45歳の時に感じていた老化や疲労感は一切なく、まるで18歳に戻ったかのような若々しさを持っていた。筋肉も張りがあり、動くたびに身体の軽さが実感できる。まさに「若返った」と言うに相応しい状態だった。


「一体どうなっているんだ…?」


自分の身体の異変に戸惑いながらも、冷静さを保つことに努めた。まずはこの場所を理解しなければならないと考え、室内を探索し始めた。部屋には大量の書物が並び、机の上にも数冊の本が開かれたままだ。その本のいくつかは古びた革表紙で、文字が読み取れないが、見た目からして重要な情報が書かれていそうだ。


僕は机に近づき、開かれた本の一冊を手に取った。ページをめくると、そこには見たこともない文字が並んでいた。まるで古代文明の象形文字のような記号で、どれも複雑で美しい。いくら目を凝らしても、意味が掴めない。


「これは一体…?」


自分の手で開いたページには、神秘的な模様や図形が描かれている。それらはまるで古代の遺物のようで、僕の知識には全くない全く未知の言語だった。普段ならこのような状況で焦りが募るはずだが、どこか冷静でいられる自分がいた。これがもし夢ではなく現実なら、まずはこの言語を理解しなければならない。


「言語を解読しなきゃ始まらないか」


言語の壁を乗り越えなければ、この異世界についての情報を得ることは難しいだろう。前世で数々の問題を解決してきた経験が、ここで役立つことを願っていた。どんなに複雑な状況でも、まず冷静に分析し、必要な情報を集め、それを一つ一つ解読していくことで道を開くことができたからだ。


まずは、部屋を詳細に調べることにした。書物だけでなく、部屋の装飾や配置からも何か手がかりが得られるかもしれない。棚に並ぶ書物を一冊一冊手に取り、目を通してみる。どの本も内容は同じように見え、文字が解読できないため、ただの装飾にしか見えなかった。しかし、これらの本の中に、何か重要なヒントが隠されているかもしれないと考え、根気よく調べ続けることにした。


「この部屋には何かが隠されているに違いない」


そう考えながら、僕は部屋の隅々まで調べることにした。最も気になったのは、書物が並ぶ壁の一角に、少しだけ異なる質感の部分があることだった。これが何かの手がかりになりそうな気がした。手でその部分を触れてみると、他の場所とは異なり、微妙に温かい感触があった。


「これが…?」


注意深く観察しながら、その部分を押してみると、突然壁がわずかに動き、隠し扉のようなものが現れた。扉の向こうには、さらに奥深く続く空間が広がっているようだ。驚きと興奮が混じった気持ちで、その扉を開けてみることに決めた。


「ここに何かがあるはずだ」


心を決め、扉を開けると、暗い通路が広がっていた。通路の壁には、かすかに光る石が埋め込まれており、ほのかに青白い光を放っている。その光を頼りに、通路を進んでいくと、さらに奥深くに続く階段が現れた。階段を降りるにつれて、周囲の空気がひんやりと冷たくなり、神秘的な雰囲気が漂ってきた。


階段の終わりには、大きな扉が待ち受けていた。その扉には複雑な模様が彫られており、まるで何かの呪文やメッセージが刻まれているようだった。慎重に扉を押し開けると、そこには広大な図書室のような空間が広がっていた。壁一面にさらに多くの書物が並び、中央には古びた書卓と椅子が置かれている。


「これが…隠された図書室か」


この空間が一体どんな秘密を抱えているのか、僕は胸を高鳴らせながら、まずは中心に置かれた書卓に向かった。書卓の上には一冊の大きな本が開かれており、そのページには複雑な図形と文字が並んでいた。ここにこそ、求めていた手がかりがあるはずだと直感した。


「これが、言語の解読に繋がるかもしれない」


その本を手に取り、慎重にページをめくる。そこには、様々な異世界の地図や、魔法の説明、歴史的な出来事が記されているようだった。どれもこれまでに見たことのない情報ばかりだが、少しずつ理解できる部分が見えてきた。


「まずは、基本的な情報から確認しよう」


自分が異世界でどのように行動すべきか、何を最初に学ぶべきかを考えながら、ページを一つ一つ読み進める。言語の壁はまだ完全には突破できていないが、この知識があれば、徐々にこの異世界の謎を解明していけるだろう。



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