陽だまりの哲学カフェII ~お姉さんと考える女性哲学者の思想と歴史~
藍埜佑(あいのたすく)
序章:哲学への招待
春の陽気が心地よい午後、双子の弟・永遠(とわ)と妹・花凛(かりん)が学校から帰宅すると、リビングでくつろぐお姉ちゃんの姿が目に入りました。今日は珍しく仕事から早く帰宅したらしく、ソファに座ってスマホをいじっています。
「ただいまー!」
二人が元気よく声を上げると、お姉ちゃんが顔を上げました。
「おかえり! 今日はどうだった?」
「まあまあかな」と永遠。
「うーん、ちょっと疲れた」と花凛。
お姉ちゃんは二人の様子を見て、にやりと笑います。
「なになに? 何かあったの?」
永遠が少し困ったような顔で答えます。
「いや、別に何もないんだけどさ。今日、倫理の授業で哲学の話になってさ」
「あー、あれね!」と花凛が割り込みます。
「全然わかんなくて、頭ぐるぐるしちゃった」
お姉ちゃんは興味深そうに身を乗り出します。
「へー、哲学か。どんな話だったの?」
永遠が首をかしげながら答えます。
「なんか、プラトンとかアリストテレスとか、難しい名前の人たちの話ばっかりで……」
「そうそう!」と花凛が同意します。
「しかも、みーんなおじさんばっかり! 女性の哲学者はいないのかなーって思っちゃった」
お姉ちゃんの目が急に輝きます。
「おっ! 花凛はいいことに気づいたわね! 実はね、哲学の世界には超カッコいい女性たちもたくさんいるんだよ」
双子が驚いた顔で見つめます。
「えー! そうなの?」
「うん! しかも、その人たちの話を聞くと、哲学ってすごく身近に感じられるんだ。ねえ、聞いてみない? 女性哲学者たちの物語」
永遠と花凛は顔を見合わせます。
「うーん、でも難しくない?」と永遠。
「私、頭いい人の話についていけるか心配」と花凛。
お姉ちゃんは優しく笑います。
「大丈夫だよ。難しい言葉は使わないから。それに、哲学って実は私たちの日常生活にすごく関係があるんだ。例えば……」
お姉ちゃんはちょっと考えて、こう続けます。
「永遠、花凛。あなたたち、『友情って何?』とか『本当の幸せって?』とか考えたことある?」
二人はちょっと驚いた顔をします。
「あるよ!」と永遠。
「私も!」と花凛。
「それこそが哲学の始まりなんだよ。難しく考える必要はないの。日常の中にある『なぜ?』や『どうして?』を大切にすること。それが哲学なんだ」
双子の目が少し輝き始めます。
「へー、そうなんだ」
「ねえ、じゃあさ」とお姉ちゃん。
「古代ギリシャから現代まで、時代を追って女性哲学者たちの物語を聞いてみない? 彼女たちの人生や考え方を知ると、哲学がもっと面白く感じられると思うんだ」
永遠と花凛は少し興味を示し始めます。
「いいよ」と永遠。
「聞いてみたい!」と花凛。
お姉ちゃんはにっこり笑って立ち上がり、本棚に向かいます。
「よーし、じゃあ準備するね。この話を通して、きっと新しい発見があるはずだよ。哲学って、自分自身や世界についてもっと深く知るためのツールなんだ。難しく考えず、楽しみながら学んでいこう!」
お姉ちゃんは何冊かの本を取り出し、テーブルに広げます。永遠と花凛も、少し緊張しながらもワクワクした表情でソファに座ります。
「じゃあ、まずは古代ギリシャの女性哲学者から始めようか。準備はいい?」
双子が頷くのを見て、お姉ちゃんは物語を始めます。
「はるか昔、古代ギリシャの街アテネに、アスパシアという女性がいたの……」
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