メサイアの憂鬱

酒麹マシン

屋上からの景色

学校の屋上から、地面を見下ろす。

驚くほど遠くに見える地面を見て、少しクラクラした。


私は今日自殺する。

理由は「アオハル」などといって女子たちの思い出作りに巻き込まれることに、嫌気がさしたからだ。


どうしようもなく平坦に進んでいく日常に、私は重たさを感じずにはいられなかった。

仕方なくいた女子のグループの「アオハル」作りに付き合わされる毎日。

写真を撮り、着飾るだけの日常。

写真を撮ることなんて、物を生み出すだけのものなのに、なんともそれが滑稽で、それを断れないでいる自分が愚かで無様に映った。


人間、地獄に物は持っていけない。

それは、どんなに富豪なものも貧しいものにも言えることだ。

私には、

世間はアオハルだなんだって囃し立てる。でも私は気づいている。


アオハルなんて、所詮は子供時代に憧れた大人たちのステイン。

決してその真相は爽やかなものでも、心躍るようなものでもないことを。


なのに、今その「思い出作り」のための人生を送るべきなのか?


無意識に、楽しかった日常が、大人になったときに青く映るものではなくて?


棒に振ってしまった子供時代。

『大人になったらもっと楽しいことがある』と、周りの大人は言うが、私は決して信じない。

引き攣らせてできたその笑顔のように見えるシワのせいで、私は信じることができなかった。


スカートが私を空へと誘うよう、風に靡いた。


「残念だけど、私これから地獄に行くんだよね。」

と、靡くスカートに語りかけた。


私が死んで、悲しんでくれる人なんていないだろ。


生まれてすぐに施設に預けられ、集団の中で孤立する生活を送り、そうして小学校で出会った女子グループに、誘われるがままについていき、気がついたらもう高校を卒業するまでに至った。


私たち、ズッ友だよね!


ケロッとした健全で明るい声が耳に響く。


いや、全然そんなことないっす。


口だけは皆に揃えてきたが、もう限界だ。


どうしようもない量の「仕方なく」が積み上げられた人生なんて、二度と振り返りたくもない。


孤独を紛らわせられると思っていたが、かえってその傷は深まっていった。


惨めで、醜い私がこの先もずっと付き纏うと思うと、人生を歩むことを諦めたくなった。



だから、もう、覚悟は決まっている。

屋上の縁に立ち、ブラブラと足を空中に泳がせた。

程なくしてその右足をしまい、両足をきっちりと揃える。

まるで体を支えていた左足を敬うかのように。


やっと人生を終えられる。

解放されるんだ、「いるべき姿」から。


「じゃあ、またね。」


私はまるで夏場のプールに飛び込むような揚々とした気持ちで両足で跳び、空へと飛び込んだ。


落ちる間、逆さまに流れていく景色と風を切る音を聞きながら、死を待った。


何か考えるまもなく、私は地面へと叩きつけられた。

その瞬間、自分のうちにあった何かが爆散した。


青空に血飛沫が散るのが映った。


何かに目覚めたかのように、私は目を見開いた。


そして、脳内で叫ぶ。


「やっぱ私、死にたくなかったんですけどーーーー!」


視界が途切れる。


え?私、ここでおわんなきゃダメ!?


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