48.カラフルドラゴン勢揃い
リュシーの言い分によれば、仲間に協力してもらえば、より早く私の怒りが解ける。そう思ったんですって。皆においでよと呼びかけた結果、ドラゴンの末っ子の願いは騒動を大きくした。
本国のある大陸の主でもある、銀鱗の竜が動く。長老格の銀竜にとって、リュシーは孫も同然だった。可愛くて仕方ないのだと豪快に笑う。主が動けば、配下も従うのが常で。
赤、青、黒、白、茶、緑……色とりどりのドラゴンが並んでいる。リュシーを入れて八頭だった。
「ドラゴンって、一頭? 一匹、それとも一人かしら??」
数える単位を尋ねれば、迷いながらもレオが答えた。
「一尾じゃないか?」
「坊ちゃん、それじゃ魚じゃねえか」
「おらぁ、一人でいいと思うぜ」
寛いでいた民からの声が上がり、そういえば単位が統一されていないと盛り上がった。もう、正直なところ……彼らは何でもいいのよ。盛り上がる理由がほしいの。このまま日が暮れたら、酒盛りが始まってしまうわ。
「お父様、レオ。王宮へ向かいましょう」
くーん、鼻を鳴らすリュシーが足を踏み鳴らす。地を揺らすほどの効果はないが、音はよく響いた。ドラゴン達は離れた場所に舞い降りて、よちよちと走ってくる。地上を歩いたり走ったりするのに不向きな足は、どこか不格好でユーモラスだった。
ウサギに似た後ろ足だけで走ると、立ち上がった犬のようにふらつく。前足も使えばいいのに、と思うが彼らなりに理由があるようだ。集まったドラゴンは、リュシーに頬を寄せて挨拶した。互いに鼻を突き合わせ、すんと匂いを嗅いだら頬を押し当てる。
「過剰戦力よね」
威圧するだけでいいのに、主を含めて八頭のドラゴンが協力してくれる。伯父様にとっては災難でしかなかった。同情はしないけれど。
「リュシー、私たちの上を飛べる? 皆を守る感じで……ぐるりと囲んでほしいの」
要望を伝えれば、リュシーはむくっと起き上がった。腹這いの反省姿勢から、一気に凛々しいドラゴンに変わる。ただ、毛が生えているので、どうしても狼や犬に見えちゃうのよね。
リュシーが鼻を鳴らして協力要請し、他のドラゴン達はあっさり了承した。正直、彼らの感情を察する能力を持つ私が、拍子抜けするくらい……本当にあっさりと。いいよ! と返答するドラゴン達は、鼻を突き合わせて相談を始める。
誰がどこを担当するか、どこまで攻撃が許されるか。そういった確認を終えたドラゴンは、集まった民の外側で羽ばたいた。気合いの入った民がわっと走り出し、慌てて貴族が先頭に出ようと人混みをかき分ける。
何とも締まらないスタートだけど、王宮へ向かう意気込みだけは感じられた。残ったリュシーがぺたんと伏せて、背に乗れと促す。レオのエスコートで背中によじ登り、二人で跨った。浮き上がるときのふわっとした感じが怖いわ。
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