思ったよりも異世界が楽しすぎたので、このまま王都の片隅でポーションスタンドでも始めてのんびり暮らします。

雉子鳥 幸太郎

第一部

プロローグ

ローブを纏った魔術師さん達が一斉に頭を下げた。



「「「ほんっ…とうーに、申し訳ありませんっ!」」」



背中を押されて前に出てきた魔術師さんが、気まずそうに愛想笑いを浮かべながら、「こ、これを……」と、私に革袋を押しつけてくる。


訳も分からないまま、小さい割にずっしりとした重みのある小袋を受け取ると、一人だけ白いローブをまとった睫毛の長い魔術師さんがコホンと咳払いをした。


「幸い、神楽木かぐらぎ様には『錬金術師』の適正がございます。大変汎用性の高いジョブですので食べていくのに困ることはないでしょう……」


「いや、ちょっと待ってくださいっ! 急にそんなことを言われても……」


せめて仕事を紹介するなり、独り立ちできるまでは面倒を見るのが筋ではないかと、必死に食い下がろうとするが、誰も私と目を合わそうとしない……。


「で、では、そういうことですので……今後の神楽木さまの生活が実り多きものになりますよう、我ら一同……」



「「「心よりお祈り申し上げます」」」



全員が深くお辞儀をしたと同時に、お城の大きな門扉が閉じられた。





「……は? 嘘でしょ?」




その場にぽつんと残された招かれざる異世界人。

それが私、神楽木 凪かぐらぎ なぎだった――。

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2024年12月22日 12:00
2024年12月23日 12:00
2024年12月24日 12:00

思ったよりも異世界が楽しすぎたので、このまま王都の片隅でポーションスタンドでも始めてのんびり暮らします。 雉子鳥 幸太郎 @kijitori

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