番外編〜誕生日会〜
※作中に新キャラ(に近い)人が登場します。
校正後verの2話と17話に名前が出ますので、参照あれ。
ただし、まだ5話までしか校正できていません。お待ちください。
ーーーーー
この世界に、日付という概念はなかった。
必要ではなかったからだ。
しかし、1か月前にカレンダーが現れた。
きっとそれに詳しい転生者が絡んでいるのだろうと睨んでいるが、定かではない。
それを聞けば、間接的に自分は転生者だと明かしているようなものだからだ。
とまあ、なにが言いたいかというと。
この世界には『誕生日』という概念がなかったのだ。
だから私は、適当に誕生日を決めた。
それが今日11月5日だ。
__朝。
「ミュラー様、朝でございます。お起きくださいませ」
リエが私を起こそうと声をかける。
私の朝は、こうして始まる。
「おはよーリエ。もうちょっと寝るー」
寝返りをうち、彼女から顔を背ける。
「いえ、起きていただきます。コノン」
「はいっリエ様! お任せください!」
無駄に元気な声がしたかと思うと。
「ひゃひゃひゃひゃ!………なに!?」
こしょこしょ攻撃が突如始まった。
驚いて裏返った声で非難する。
「お嬢様はこうしなければ起きていただけないとようやくわかったのです。観念してください!」
なんてこと。
「わかった、起きるから止めてえええ」
絶叫し、潔く負けを認めた。
息を整えた私を見て、リエとコノンが同時に言った。
「お誕生日おめでとうございます、ミュラー様」
「おめでとうございます、お嬢様!」
頷いて笑みを見せる。
「ありがとう、2人とも!」
その後は、普段とあまり変わらない日常を過ごした。
ただし、誰が伝えたのか、顔を合わせる侍従侍女すべてが祝いの言葉を言ってくれる。
使用人の中でも下級には伝えられていないところを見ると、階級社会を垣間見る。
だからと言って私に変えられることではないし、冷たいことを言うようだが、そもそも改善する利点が私がない。
得がないし、貴族社会では異端とされる行動をとるほどバカではない。
__夜。ディナーのとき。
誕生日パーティーが開かれることになった。
伯爵家から帰ってきた姉が近寄った。
「誕生日おめでとう、ミュラー」
「ありがとうございます、お姉様」
軽く頭を下げる。
「6歳だっけ?」
「そうです」
「早いわねえ」
「お姉様がなにを言います。急に老けてしまわれましたか」
冗談のつもりで笑いかける。
「そんなわけないでしょ?」
それがわかる姉は
「そうでしたね、失礼しました」
姉が私を立ち上がらせて案内する。
「ご飯の前に会ってほしい人がいるの」
「どなたでしょうか。私は知っていますか?」
「名前だけなら知っているわよ~」
誰だろ、マジで思いつかない。
キョロキョロする若い男性が目についた。
会ったことはないが………まさか彼が?
彼は姉に気がつくと、手を振った。
彼女も小さく手を振っている。
「ミュラー、彼はテンタルト子爵家嫡男レイバンス様」
おっと、上の階級の方だったか。
不躾な視線を送ってすまない。
「お初にお目にかかります。ロイリー・ハイカルの妹ミュラーと申します」
カーテシーも忘れずに披露する。
「ご丁寧にありがとうございます。レイバンス・テンタルトと申します」
軽く会釈を返される。
………ん? 聞いたことある気がする。
「言ったことはあるけれど、彼とは婚約する予定です」
………?
フィアンセ………?
えっレイバンス様と婚約!!
「姉の婚約者様でしたか………失礼しました」
「まだしていませんよ?」
そういうことじゃない。
「では
「そうですね。ロイリーはあなたのことをよく褒めています。仲良くさせていただきたい」
「こちらこそでございます。
格上かつ年上にも関わらず、どこかかわいさがあって、思わずからかってしまった。
「んなっ! まだしていないと言ったではないか!」
「ふふふ、申し訳ありません。レイバンス様」
あまりにも私が楽しそうに笑っているので、レイバンス様は姉を標的に据えたようだ。
「ロイリー、言っていたことと違うじゃないか」
「きっとからかわれますよ、と言いましたよ?」
「本気だとは思わなかったぞ………」
姉をぽんぽんとつつく。
「それでお姉様は私をなんだとおっしゃったのです」
「内緒よ!」
「気になりますよ~」
「私は食べてくるがいいか」
「拗ねてるんですか?」
「そんなわけないだろう!」
「レイバンス様、ミュラーに張り合うのは悪手ですわ」
「其方までそう言うか!」
2人でカラカラ笑っていると、両親がやって来ていることに気づいた。
「お父様、お母様」
「ミュラー、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
あれ、これってレイバンス様の両親挨拶になるのでは?
「ご機嫌よう、ハイカル男爵卿、男爵夫人殿」
今度はちゃんとしたお辞儀。
「ああ、久しいなレイバンス殿」
「来てくれたのですね」
「はい夫人。招待状を受け取って小躍りする気分でありました」
「まあ、口が上手いこと」
ほほほと母が褒める。
「そこで談笑するのもよいが、食べに行ってくれ。冷めてしまう」
「もうあなたったら。嫉妬でもしているんですか?」
「アマリ! 私が誰に嫉妬していると申すか!」
さっき見た光景と同じことが繰り広げられている。
お父様もレイバンス様も、妻の尻に敷かれる運命なのだろう。合掌。
「お母様、好きです」
純粋な気持ち半分、父の反応を見たい気持ち半分。
「6歳になったというのに甘えん坊さんですわね~。それがいいんですけれど。ロイリーはなかったものね」
抱擁が返ってきてふふんと得意気になる。
姉はあまり甘えてこなかったらしい。
私を説得したときもとても大人っぽかったので、察してはいたが。
「いいではありませんか。私は甘えるタイプではないのです」
「ですが、殿方は甘えられたい方が多いですわ。ねえケイリー様」
母から父の性格が暴露され、少し慌てたように肯定する。
「う、うむ。別に私がそうとかいう話ではなく、一般的にそういう傾向にあるな。なあレイバンス殿」
今度は婿殿に話が飛ぶ。
「え!? あ、はい、ソウデスネ」
父と婿殿をも巻き込んだため、姉にとっては説得力のあるものとなったようだ。
「善処いたします。それではレイバンス様、まいりましょうか」
「は、はい」
連れていかれた義兄様を見送り、美味しいディナーに手をつけようとリエを探しにいくのだった。
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