第17話 月の世界と太陽の世界?  みみっく

 謎の女性が謎の言葉を漆黒の夜空を見ながら呟いているのが聞こえた。


「あなたは誰?」


 俺が叫ぶように尋ねると女性が、こちらを振り向く仕草をするとフワッと姿を消してしまった。


(……何を言ってるんだ? 月と太陽の世界を自分の物?)


 女性が消えたので気を抜いて考え事をしていると背後から声が聞こえた。


「私は、私だ。それを聞いてどうするのだ?何の意味があるのだ?友人にでも、なるつもりなのか?」


(うわっ。面倒なやつだ……。関わりたくないタイプだな)


「い、いえ……気になったので聞いてしまっただけです」


「そう。向こうにいる娘も、こちらの世界の人間ではないようね」


(なんで俺が、この世界の人間じゃないと知ってるんだ? それにルナもこの世界の人間じゃないのか? 魔法を使っていたよな?)


「……なぜその事が分かるのですか? 俺がここの世界の人では無いと! それにルナも!? ルナもこの世界の人間じゃないのですか? ルナは魔法が普通に使えていますよ」


 女性がクスッと微笑み、微笑むとキレイな女性に見えた。


「……思い出したわ。あなたも、あの時に側にいたじゃない」


(側に? 何の事を言っているんだ? いつの話だ? 意味が分からないぞ)


 女性が近づき、俺の肩に触れて話を続けた。


「昔ね、この月の世界と太陽の世界が繋がる日があったのよ。その時に繋がる樹木がここにある木と、太陽の世界にある木なの。繋がった時に巻き込まれた娘が、あそこに居る娘であなたが側にいた男の子ね」


(ぼんやりと思い出して来た。それって……昔に行方不明になった……ルナって妹のルナだって事か!? だから始めから親近感があって、直ぐに仲良くなったのか)


「知ってて放っておいたのですか!? あなたの不思議な力があれば助けられたのではないのですか!?」


 怒りが込み上げて思わず強い口調で言ってしまった。だがそれは仕方がない。大切な妹との時間を奪われたのだから。


「それはムリだったわ。こちらの世界に飛ばされ助けようとしたわ。だけれど……あの娘は、パニックになって走って行ってしまったのよ。近くにいてくれれば助けられたのだけれど」


(そういう事か……。木の周辺だけに使える能力だったら仕方がない。それに覚えているって事は気にしていてくれたって事だよな)


「そういう事だったら仕方がないよな」


「元の世界へ戻りたければ今日中に、ここに戻り。この木に触れ、元の世界へ戻りたいと強く念じよ。消えた時間、場所へに戻れる」


 女性の顔が寂しそうな表情をして話を続ける。


(また急に元の世界へ帰れると言われても、この世界も良いかなと思い出してきていた所だぞ? ルナと一緒にくらせると思って……。あ、ルナはどうなんだろ? 一緒に戻る気はあるのかな? 向こうの世界へ戻っても勉強、仕事の生活が待ってるだけだし……俺はここに残りたい)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る