第9話 楽しそう!? みみっく

「それで場所は知ってるの?」


「それは、なんとなくかなぁ」 


 ルナは自信が無さそうな表情をして返事をしてきた。



(本には太陽の世界の人間と書いてあったから、ルナには確認は出来ないよな)



「それじゃあ、これから確認に行くのか? その場所へ」


「せっかく遠い街まで来たんだから……一緒に見て回らない?」



 ルナが頬を赤くさせて誘ってきた。



(ここの世界の人間じゃないし、俺には予定が無いから良いんだけど。お金は持ってないぞ?)



「それは問題ないけど……お金は持ってないからな? 知ってはいると思うけどさ」


「大丈夫! 買い物をする気はないから。ただちょっと見て回りたいだけだよッ」


 すでに決定事項らしく、返事を聞く前から腕を掴まれて出口に速歩きで連れ出された。改めて周りを見渡すと、当然該当が設置されていてお店もキレイに輝いてキレイな雰囲気で落ち着いた感じだ。派手なライトアップやネオンが輝いている感じではない。


 人通りは、そこそこあり逸れてはルナと再開できそうにない感じの人混みではある。それを考えると不安になり表情に出てしまっていたのかルナが腕を掴んできた。



(え? これじゃ……付き合ってるみたいに見えるんじゃ?)



 一瞬そんな考えをしてしまった。



「ここで逸れちゃったら見つけるの大変だから」


「だよね。俺も探し出すの自信がないわ」


「探すのは、私だよっ! もし逸れたらその場から動かない事! それか図書館まで戻れるなら戻ってきてね?」


 心配そうだけど嬉しそうな表情にも見えた。

 

 嬉しそうな表情のルナに、付いていく。大通りに出たのか、かなり人通りが増えた。ルナは見えていないのか、前から大きな男性が歩いてきている。このままではぶつかると思い、ルナの肩をら抱き寄せて当たらないようにする。自分よりも幾分小さなルナはさらにぎゅっと小さくなっている。自分の胸元にあるルナの顔を覗き込んだ。



「大丈夫?」



 ルナは、コクコクと頷いて耳まで赤くしていっぱいいっぱいといった雰囲気が出ている。思わず自分に引き寄せたのがまずかったのかと、肩から手を離した。離れる俺の手をぎゅっと握って、ルナが手を繋いで歩き出す。



「これなら、迷子になら無いんじゃ無い?」



 ぽわっと赤くした顔で、手を引き可愛い笑顔を振り撒く。強く握らないほどの優しい力で、ルナの手を握り返した。柔らかな手が、自分の力によって壊れてしまいそうで少し不安になる。


 ずんずんと進むルナは、果たして行きたいところや行く当てがあるのだろうか。少し不思議に思いつつ、この世界のことを全く知らない俺は付いていくしか無かった。



「あっち!」



 ルナの指の先には、空をさしているのか空に浮かぶ島を指しているのか分からない。ルナの視線に少し腰を落として、指の先を探した。空で視線を遊んでいたら、ルナがムッとした声でもう一度指をさしてもう一度アピールを受けた。


 しばらく無言の中で、お互いに空を見上げた。これでは埒が開かないと、俺は口を開いた。



「えっと? あの島のこと?」



 視線の横にいるルナを見ると、ちょっと頬を膨らませてむすっとさせて頷く。もう一度視線をその島に戻した。

 その島は、暗い空よりもさらに黒い雲が島を囲むようにぐるぐると動いている。漂う雲は禍々しいオーラを放ち、いかにも足を踏み入れてはいけない土地だろう。



(いやいや! あれは、まずいでしょ)



 そんな俺の心をルナは読んではくれず、器用に口笛を吹いて先ほどの黒い鳥を呼ぼうとしている。ピュッーっと綺麗な高音が、島々に乱反射してこだまする。


 その音が消えるよりも先に、バサバサと空の闇に馴染む黒の鳥が飛んできた。大きな翼を折りたたみ、ルナに擦り寄る。先ほどのように、ルナはヒョイっとこの大きな黒い鳥に乗る。これほど離れているのに恐ろしいオーラを感じる、あの島に行くのかと俺は足がすくみ立ち止まってしまう。


 ルナは、冒険にでる子供のように目を輝かせて鳥の背中をポスポスと叩いて俺を促してくる。ため息を小さくつき、俺もその後ろに乗ることにした。


 ふわりと浮き上がって、先ほどの黒い雲のかかる島に飛び上がる。



「さぁー行くよっ」



 嬉しそうな声をルナが出すと鳥が徐々にスピードを上げると高度も上がって街がだんだんと小さく見える。



「さっきは……その、変な感じになっちゃったけど……違うからね!」



(違うって? 何が違うんだ? 何の話をしてるんだ?)



「何の話?」


「だから、その……違うのって話だよ!」



 ルナが顔を赤くさせてムキになって言ってきた



(何があったんだ? そんなムキになる事があったか? 話を合わせておくか)



「……そう。違うのね? 分かった」


「それ、適当に返事してるでしょ!? 同じ歳の友達が周りに居ないの! だから赤くなったりドキドキしちゃったの!そういう事っ!」



(あぁ……そういう事か。確かにドキドキしたな。それに頬を赤くさせて……良いムードになってたな。それを否定したいわけね)



 俺が納得した表情をすると、ホッと安心をした表情をさせて満足そうに前方を見た。



(一応、返事はしておくか)



「そういう事ね」


「そういう事だよっ! 違うんだからッ」



(えっと……これじゃループだな。でも、会話が出来て楽しいかも)



「そんなに否定をするくらい嫌だったのか?」


「……それも違う……ケド。違うのっ!」



(楽しいかもを撤回するわ。こんなに否定をされるとツライかも)



「そう」


「……そうなのっ」



 浮島が見えてくるとルナが振り返り、先ほどとは表情が変わっていて緊張をした表情となっていた。鳥は島の上空に浮かび上がり柔らかく着地した。



「到着しちゃったね」


「だなぁ」



 見渡すと島の中心にデカい山が見え周りに侵入を拒むかのような森が広がっていて、しばらく森の探索をしなければならなそうだ。


 普通の森では無さそうで紫色の霧が森を覆っていて、如何にも危険で入るなといっている。お互いに視線を合わせて頷くとルナが鳥を撫で優しく声を掛けると飛び立っていってしまった。



(え? 鳥を返しちゃうの? 帰れないんですけど? ルナと逸れたら帰れないな)



「この怪しい感じ、気を付けないとだな」


「うん。何があるか分からないから気をつけよ!」



 二人で寄り添いながら辺りを警戒をしつつ森の中に入っていく。紫の霧が視界を阻み警戒をしていても辺りがよく見えなく、頼りになるのは物音だけだった。


 警戒のために一応、使えない初めて触る剣を抜いておいた。



「斧を持つのも初めてだったよね?剣は使ったことあるの?」


「……ないけど?」


「それ、抜いちゃダメじゃない? 間違って斬られそう……」



(ルナの言う通りかもな……)



「一応、警戒をしておこうと思ってさ」


「ありがと。でも、仕舞っておいてくれる?危ないから」


「……だよね」


 抜いた剣を恥ずかしい思いをしながら収めた。



(ルナは、剣を使えるのかな? 余裕そうだけど? 魔法を使えるから余裕があるのかな?)



「余裕そうだけど、剣を使えるの?」


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