第2話 まさかの、異世界へ!? 白崎なな
体の力が抜け、寝転がりながら辺りを見渡す事しか出来ない。
(さっきまで、見知った景色だったはずなのに。なぜこんなところに……? 何かヒントになるものはないかな?)
先ほどまでの景色を思い返す。真っ白の花弁と共にふわりと香る芳醇な香り。肺いっぱいに広がったその香りは、何かを思い出させるような気がした。どこかで感じたことのあるような香りだった。
足に力をこめてみるが、やはり身体は言うことを聞いてはくれない。仕方なく、左右をキョロキョロとしてみた。そこには、ここへ俺を誘った黒い花の木が根を伸ばしていた。
その木を見つけハッとなり、目を見開いた。手だけでもと、指先を動かした。その刹那、黒の禍々しい花の木は黒の粉となり消えていく。
釘で打たれて動けなくなっていた身体が急に、思うように動かせるようになった。先ほどまで力を入れていたので、ごろごろとその場で転がる。
目の前が先ほどの木の粉で、黒く染まっている。空には、そんな俺を見下ろして嘲笑う月が嫌なほどの光を放っている。
周りには何も無いし、ここが何処だかも何も分かるものは無い。空の主役が月なので、夜であることには違いないだろう。星々も瞬き、自分のいた場所から見える星の数倍の数で美しい。
月はかなり大きく、何処までも青白い光が届いてしまいそうだ。どんなところにいても月に見られているような、そんな不思議な感覚に陥る。
(ずっと見られているみたいで、嫌な感じがする)
冷えた空気を肌で感じ、身震いをする。月を背中にして歩き出す。寒さに耐えられず、腕を軽く擦る。かなりここは、高い位置にあるようで眼下に広がる世界は星々よりも輝いていて目が眩みそうになる。
今のいる位置と同じほどの高さにある浮かぶ島から川が流れ出し、大きな滝を作り出している。下に落ちる水は、ゆっくりでぽたりと落ちていく。落ちた先には、湖のようになっている。
(なんだ? ゲームか何かの世界に入り込んだのか?)
下を見ると自分のいる場所も空に浮かんでいて、足がすくんでしまう。全てが繋がってはいないようだ。
まずは、今いるこの島を探索しないことには、何もはじまらない。眼下に広がる景色を脳裏に焼き付け、俺は歩き出した。
周りには、特に変わったものは無さそうだ。奥へ進んでいくと、空から黒い大きな鳥が降りてきた。こちらを一瞥をして、その黒い鳥は飛んでいってしまう。
(人間なんて一口で食われそうな大きさだったんだが?)
あんなのがゴロゴロと生息をしているのかと思うと、背中に冷たい汗が流れる。心臓が驚きで飛び跳ねたのを落ち着かせるため、胸に手を当て目を閉じて深呼吸をする。
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