第40話 未来への一歩
ならず者たちが退き、蓮華の市に静寂が戻った夜。広場に立ち尽くす涼王と玲蘭は、まだ残る戦いの余韻を感じながら、お互いの無事を確認し合っていた。
「玲蘭、君のおかげで、この街は守られた。君がいなければ、ここまで来られなかっただろう」
涼王は優しい眼差しで玲蘭を見つめ、静かに感謝の言葉を口にした。玲蘭もまた、その言葉に心が温かくなるのを感じた。
「陛下、私も……陛下の力があったからこそ、共に戦い抜けたのです」
玲蘭の言葉には、涼王に対する深い信頼と感謝が込められていた。彼のそばで戦い、共に困難を乗り越えたことで、彼女は自分がこれまで以上に強くなったと感じていた。
「私はこれからも、陛下のおそばで、この国と人々を守るために尽力します」
玲蘭の決意に満ちた言葉を聞き、涼王は静かに微笑んだ。そして、そっと彼女の手を取った。
「君は、ただ忠誠を尽くすだけの女官ではない。私にとって、君は特別な存在だ。これからも君と共に、この国を支えていきたい」
涼王の真剣な声に、玲蘭は胸が高鳴った。彼女にとっても、涼王は特別な存在であり、これからも彼の隣に立ちたいという気持ちが強くなっていた。
「陛下……ありがとうございます」
玲蘭は感動に包まれながら、涼王の手をしっかりと握り返した。その瞬間、二人の心が強く結ばれたことをお互いに感じた。
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その翌日、蓮華の市は少しずつ通常の生活を取り戻し始めていた。ならず者たちの襲撃が終わり、人々は再び平穏な日常を取り戻しつつあった。街中には安堵の表情を浮かべる人々の姿が見られ、警備隊もその任務を果たし終え、疲れた顔を見せていた。
玲蘭は街の復興のために動き回っていた。戦いが終わっても、まだ市民たちを助けるためにやるべきことは多かった。瓦礫の片付けや、壊れた建物の修復を指示しながら、彼女は一人ひとりの状況を確認していた。
「玲蘭、ありがとうな。お前たちのおかげで、無事に生き延びることができた」
一人の商人が玲蘭に感謝の言葉をかけた。玲蘭は微笑みながら、その商人に力強く応えた。
「私たち全員で守り抜いた街です。これからも一緒に復興していきましょう」
街の人々は、玲蘭の強いリーダーシップと温かい言葉に支えられながら、再び立ち上がっていた。
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その日、涼王は蓮華の市を離れることを決めていた。彼の役割は一旦ここで終わり、宮廷に戻るべき時が来ていた。しかし、玲蘭にとって、この別れは新たな試練だった。
(私は陛下と……これからどうなるのだろう)
涼王が去ることで、彼との関係がどう変わっていくのか、玲蘭の心には不安が渦巻いていた。しかし、彼女の心にはもう一つの強い想いもあった。
(陛下のために、これからも尽くしたい。彼の隣に立ち続けたい)
涼王が旅立つ前に、玲蘭は彼のもとを訪れた。邸宅の前には涼王が護衛を連れて出発の準備をしていた。
「玲蘭、君には多くのことを背負わせてしまったな。だが、この街は無事だ。そして君もまた、私の中で重要な存在だ」
涼王は深い感謝を込めて、玲蘭に言葉を送った。
「私は、陛下のそばで仕えることができて幸せです。そして……これからも、どうかお傍にいさせてください」
玲蘭は一歩踏み出し、彼女の心の奥にある願いを正直に口にした。涼王の目には、玲蘭に対する深い思いが映っていた。
「もちろんだ、玲蘭。これからも君と共に歩んでいきたい。君がいてくれる限り、私はこの国を守り続けることができる」
涼王の言葉に、玲蘭の心は確かなものになった。彼女は自分の居場所が涼王の隣にあることを確信し、彼と共に未来を歩む決意を固めた。
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涼王は馬に乗り、玲蘭の元を離れる前に、彼女に最後の一言を残した。
「私が宮廷に戻ったら、君も私の側で仕えてほしい。そこが君の本当の居場所だ」
玲蘭はその言葉に深く頷き、涼王の背中を見送った。その背中が小さくなっていく中で、彼女は自分の新たな道が開けていくのを感じていた。
(私は、陛下のために……これからも歩んでいく)
蓮華の市に再び静寂が訪れ、涼王の姿は見えなくなった。しかし、玲蘭の心には、彼と共に築く未来への強い希望が宿っていた。
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